まず、King's College LondonのDominik Bullach氏とDavid Burns氏との共同研究で、階数1のモチーフのゼータ元はRubin-Stark元のツイストによって得られるという予想を明示的に定式化した。この予想は、Deligne-Ribetのp進L関数の補間性質、Deligne-Souleの円分元とDirichlet L関数の特殊値との関係、p進Beilinson予想、Solomonの明示相互法則など様々な現象を統一的に一般化する予想である。この研究において、玉河数予想への応用や、Buyukboduk-LeiによるCMアーベル多様体に関する予想との関係も与えた。 次に、慶應義塾大学の片岡武典氏との共同研究で、一般のモチーフに対する岩澤主予想を定式化し、弱い仮定の下でその予想の「半分」を解いた。さらに、一般のモチーフのゼータ元の「微分」に関する公式を予想として明示的に定式化し、玉河数予想を解くための自然な戦略を立てた。こうした一般論をHeegner点の設定の場合により詳しく考察し、BSD予想や岩澤主予想を仮定すると、Heegner点と関係する階数2のオイラー系が自然に構成できることを示した。この研究は、Heegner点と階数2のオイラー系との関係を与えた点で新しい。また、この場合のゼータ元となっていることが期待される「Heegner元」というものを導入し、その微分に関する明示公式を予想として定式化した。この予想の代数版は岩澤主予想からほぼ導かれることも証明した。また、この予想を用いてBSD予想を解く自然な戦略も与えた。
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