本研究は,多様かつ豊富に存在するCohen-Macaulay環をGorenstein性との相違を指標とした階層化・分類を通して,非Gorenstein Cohen-Macaulay環論に新たな展望を齎すことを目標とする。2019年度は,主に下記2課題に着手した。 課題(1)2-almost Gorenstein環上のUlrichイデアルの挙動解析 課題(2)Weakly Arf環の基礎理論構築 課題(1)は,環の表現論に密接に関連するUlrichイデアルの偏在性を2-almost Gorenstein環という視点から解析することを目的とする。研究代表者は,Ulrichイデアル全体の成す集合を基礎環の双有理有限拡大環の成す集合と対応付けるという着想により,2-almost Gorenstein環上のUlrichイデアルを全て決定した。並行して,極小自由分解による2-almost Gorenstein環の構造定理を発見し,その帰結として,2-almost Gorenstein環となる行列式環の構成法も得られた。課題(2)では,昨年度の成果を踏まえ,J. LipmanによるArf環を,イデアル論の立場から考察,weakly Arf環論へと拡張し,基礎理論の構築・整備を行った。 研究代表者は,2019年5月にトルコのNesin Mathematics Villageで開催されたSirince Commutative Algebra Workshopや2019年8月に名古屋大学で開催されたThe 8th China-Japan-Korea International Symposium on Ring Theory,2019年11月に岡山県倉敷市で開催された第41回可換環論シンポジウム等に出席し,成果発表,情報収集,及び研究連絡に従事した。
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