研究課題/領域番号 |
17K14184
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
四之宮 佳彦 静岡大学, 教育学部, 講師 (40755930)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リーマン面 / タイヒミュラー空間 / 平坦曲面 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,Veech曲面の曲線複体,円柱分解,高さ比などVeech曲面の幾何学的性質を明らかにすることである.種数2 のVeech 曲面に対して知られている曲線複体の性質の一般化を行い,一般の超楕円的Veech 曲面上の曲線の様相を解明することを目指している.また,Veech 曲面の2通りの円柱分解で,互いの交わり方が非常に良い性質を持つものを構成することで,高さ比に関する不等式で,これまでより高精度なものを与えることが目的である. 本年度は,超楕円的平坦曲面上の閉測地線についての研究を行った.超楕円的平坦曲面上の閉測地線には2つの種類がある.一方は特異点同士を結ぶ線分をつなぎ合わせたものである.もう一方は特異点を通らないものである.特異点を通らない測地線の様相を調べることは平坦曲面の構造を調べるうえで重要である.本年度は,超楕円的平坦曲面上の特異点を通らない閉測地線で,互いに交わらず,ホモトピックでもないものの最大個数を調査した.種数2の場合はNguyen(Universite de Bordeaux)によりこの最大個数は求められていた.本研究では種数2以上の超楕円的平坦曲面で,特異点の個数が1つの場合と2つの場合全てについて最大個数を求めた.結果の証明の過程では本研究の目的であった良い展開図の構成を行った.また,本結果は平坦曲面の曲線複体への応用がある.本研究の結果を曲線複体の立場で解釈すると,曲線複体が最大で何次元の単体を含むかがわかる.更に,本結果を用いて具体的に種数3の特異点を1つだけ持つ超楕円的平坦曲面の場合について研究し,良い展開図のパターンを全て調べ上げ,それらの関係を明らかにした.これによって,種数3の特異点を1つだけ持つ超楕円的平坦曲面は全て種数0の平坦曲面に円柱を付け加えて構成できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
良い展開図の構成については,種数が小さい3,4の場合で特異点が一つの場合についてまず解決しようとしていたが,本年度の研究によって,一般種数の超楕円的平坦曲面に対して,良い展開図を与えることができた.更に,本研究の課題に本質的に関係する曲線グラフの性質について,良い性質を発見することができた.この結果も一般種数の超楕円的平坦曲面に対して成り立つものであり,予定より多くの場合について結果が得られている.また,種数3の特異点が1つの超楕円的平坦曲面については,展開図のすべてのパターンを調べ上げており,それらの関係も明らかになっている.展開図同士の関係も調べられており,この場合については平坦曲面の一定の構成法を与えることができた.本年度の研究はかなり進展したが,昨年の遅れた部分も含むため,本年度の本研究は「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,まずは曲線複体の更なる性質を解明する.特に種数2の平坦曲面の曲線複体について知られている性質が一般の場合にも成り立つのかどうかを調べる.そのために,曲線複体をグラフとしてみた時にどのような性質も持っているのかを明らかにする.超楕円的平坦曲面がVeech曲面であることが曲線複体の性質にどのように反映されるのかを調べる. また,種数3の特異点が1つの超楕円的平坦曲面に対して得られた構成法を一般の場合に拡張できないかを調べる.まずは種数の小さい場合について考察し,一般化を試みる. 曲線複体の性質,超楕円的平坦曲面の構成法を得たところで,それらを用いてVeech曲面上の閉測地線同士の交差の様相を調べる.その応用として,本研究の目的であるVeech曲面の円柱分解,高さ比などVeech曲面の幾何学的性質を明らかにすると同時に,互いの交わり方が非常に良い2つの円柱分解の構成を目指す.そして,高さ比に関する不等式の高精度化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に未使用の分があったため,そちらを使用した分,当該年度分にも未使用の分が残った.結果についての講演を行うための旅費などに充てるつもりである.
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