研究実績の概要 |
本研究の目的はVeech曲面の幾何学的性質の解明である.種数2のVeech曲面の場合に知られている曲線複体の性質の一般種数への拡張を目指している.また,超楕円的Veech 曲面上の曲線の様相の解明も目標である. これまでの研究で,互いに交わらないregularな単純閉測地線を超楕円的Veech 曲面上で最大いくつ同時にとることができるのかを明らかにしていた.今年度は同様の問題を単純閉測地線に更なる条件を付加して考察した.付加した条件によって,問題は「互いに交わらないsimple cylinderたちを最大でいくつ同時にとることができるか」というものになる.種数3の超楕円的平坦曲面で特異点が1つのものについて,互いに交わらないsimple cylinderたちの最大個数には,2つのパターンがあることが分かっていた.ほとんどの場合はこの最大個数が3個なのに対し,特別な場合には2個であった.今年度は種数4の超楕円的平坦曲面で特異点が1つのものについて,この最大個数による分類を行った.種数4の場合,多くの平坦曲面では最大個数は4個であり,種数3の場合から類推できる特別な場合には2個であることが予想できた.一方で最大個数が3個であるような場合はどのようなときか,そもそも存在するのかが問題であった.今年度の研究では,この最大個数が3個であるような種数4の超楕円的平坦曲面が存在し,どのように特徴づけられるのかを明らかにした. 本研究では更に,リーマン面の周期行列に関する研究も行った.周期行列の表示例というのはいくつか知られているもの各々別個のリーマン面に対する例ばかりであった.本研究では,パラメータ付きのリーマン面の族に対して周期行列の表示例を与えた.特に種数2の場合に関しては,明示的な表示を与えている.
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