研究実績の概要 |
四元数ケーラー多様体とはリーマンホロノミーがSp(n)・Sp(1)となる4n次元リーマン多様体であり、ツイスター空間という複素射影空間束を持つ。本研究において四元数ケーラー多様体上に「四元数ベクトル場」を導入し、ツイスター空間における正則ベクトル場と一対一に対応することを示した。更に四元数ベクトル場で実ベクトル場であるものは、ツイスター空間に誘導される実構造に対して実である正則ベクトル場に対応することも示した(Takayuki Moriyama, Takashi Nitta 「Quaternionic k-vector fields on quaternionic Kahler manifolds」arXiv:2103.12405)。これは四元数ベクトル場の集合はツイスター空間の正則ベクトル場の集合と同型であり、それぞれ実構造について実型は実型に対応することを意味する。四元数ベクトル場は交代ベクトル場であり、ある微分方程式の解として定義される。交代ベクトル場は微分形式の双対であり、様々な幾何学構造を含む概念である。よって、交代ベクトル場は本研究の「微分形式により特徴付けられる幾何構造」を拡張した対象であることから、その集合や変形を考えるのは本研究の目的に即している。1次四元数ベクトル場は四元数構造を保つ微分同相写像から誘導されるベクトル場であり、その集合は四元数多様体としての自己同型群のリー環となる。また、2次ベクトル場はポワソン構造などの幾何学的構造を含む対象であり、特にツイスター空間の正則ポワソン構造は四元数2次ベクトル場を誘導する。このように四元数幾何学において一つの研究道具を与える。また、4次元四元数ケーラー多様体(自己双対アインシュタイン多様体)は数学のみならず物理学的にも非常に重要な研究対象であると捉えられており、様々な分野への応用、関係性の発見が期待できる。
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