本研究は、3次元多様体や結び目など低次元トポロジーの研究を行い、得られた結果や他のトポロジーの結果を総合的にDNA絡み目に働く酵素の作用の解明に応用することを目的としている。 DNAに働く酵素の作用は、交差交換やバンド手術といった比較的簡単な有理タングル手術でモデル化される。酵素がDNA絡み目に反復して作用するとき、どのような絡み目を経由して最終的な生成物が得られるかという経路の決定や、一回の作用の位相幾何学的特徴づけが問題となる。絡み目の交点数、オイラー標数、符号数の関係を考察することとこれまで得られていた結果により、交差交換や向きに同調したバンド手術による絡み目解消経路に対して、交点数を上げないという仮定の元で、最初の作用によって得られる絡み目の決定とともにその作用の位相幾何学的特徴づけも与えることができた。本年度は、この結果を論文にまとめ発表し(React. Funct. Polym. 132(2018))、カナダにおける国際ワークショップにおいても口頭発表を行った。また、Soteros氏らとの研究では、チューブ内の格子結び目の局在化についての論文を発表した(Soft Matter 14(2018))。下川氏らとの研究では、3次元多様体のハンドル体分解とその応用の研究として、2つの分岐曲面が近傍同値であるための必要十分条件についての結果を論文にまとめ発表した(Topol. its Appl. 257 (2019))。
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