研究課題/領域番号 |
17K14191
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
坂田 繁洋 福岡大学, 理学部, 講師 (30732937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 凸体 / 交差体 / 凸性 / 輻射中心 / 正三角形 |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目的は、n次元Euclid空間内の凸体(有界な開集合の閉包で凸のもの)Kからあるレシピに従って作られる交差体とよばれる図形が凸になるための十分条件を与えることである。前年度までに、Kを、星体(有界な開集合の閉包で星形のもの)Lの内点pに関する動径平行体(Lをpに関して外側動径方向へ膨らませたもの)として、動径平行体の半径(膨らませる幅)を十分大きくとれば、Kは凸になり、Kの交差体も凸になることを示していた。ただし、技術的な理由から、Lの内点pに関する動径関数に2回連続微分可能性を仮定していた。 今年度の目標は、Lの動径関数の微分可能性を仮定しないで、同じ結論を得ることであった。この目標に対して、文献調査と関係する研究者との意見交換により、解決の糸口を掴むことができた。しかし、年度内に、参照すべき文献の内容を精査することをできず、したがって、論文の作成に取り掛かることができなかった。 関係する研究として予定していた凸体の輻射中心の初等幾何的研究も行った。n次元Euclid空間内の通常の距離のp-n乗と凸体Kの定義関数とのたたみ込みの最大点はKの次数pの輻射中心とよばれる。前年度までに、2つの主張「次数pの輻射中心と外心が一致する三角形は正三角形に限る」、「次数pの輻射中心と内心が一致する三角形は正三角形に限る」を得ていた。 今年度は、主張「次数pの輻射中心と重心が一致する三角形は正三角形に限る」を得る計画であったが、達成できなかった。代わりに、前年度までに得られていた結果の一般化を行った。すなわち、主張「狭義単調減少な球対称関数と三角形の定義関数とのたたみ込みの最大点が外心または内心に一致する三角形は正三角形に限る」を得た。この結果は、第66回幾何学シンポジウム、福岡大学微分幾何研究集会2019、広島数理解析セミナー・冬の研究会2020で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は、凸体の近似理論を用いることで解決されると見込んでいた。文献調査と関係する研究者との意見交換により、その見込みは妥当であることが十分に期待される。参照すべき文献を具体的に絞り込めており、その結果を適用する方法にも見当をつけている。研究計画が遅れている理由は、参照すべき文献の絞り込みに時間を要してしまったこと、意見交換を行う予定だった外国人研究者と意見交換の場を設けられなかったこと、などが挙げられる。 一方で、輻射中心の初等幾何的研究は順調に進んでいる。当初、予定していた主張は得られなかったが、解決の困難さを裏付ける状況証拠は挙がっている。前年度までに得られていた結果を大幅に改良できたことは大きな成果であると自己評価している。 各種研究集会へ参加し、幾何学と解析学の研究者と広く意見交換をし、関係する研究課題が見つかり、研究開始時点では予定していなかった成果も得られている。すなわち、研究の主題に直結する課題の解決は若干遅れているが、関係する課題の解決は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 文献調査を行い、本研究に必要な凸体の近似理論を正確に理解する。 (2) 凸体の交差体の凸性に強く関係する外国人研究者と意見交換をし、論文を然るべき形で作成する。 (3) 研究過程で見つかった関係する研究課題の解決を図り、学術論文の形で出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
意見交換を行う予定だった外国人研究者2名と、意見交換の場を設けるためにお互いの予定の調整を試みたが、年度内での実施は難しかった。その2名の外国人研究者は、2020年冬に来日する予定であり、次年度使用額はその旅費として使用する。
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