本研究の対象は、n次元Euclid空間内の交差体とよばれる星体(有界な開集合の閉包で星形のもの)である。交差体を作るための材料は、凸体(有界な開集合の閉包で凸なもの)Kとその内点pである。Kのpにおける交差体を作るための重要な情報は、Kとpを通る超平面との共通部分のn-1次元体積である。交差体は凸とは限らない。本研究の大きな目的は、交差体が凸になるための十分条件を与えることである。交差体の凸性の先行研究として、例えば、Busemannの定理「Kが点対称で、pが点対称の中心ならば、Kのpにおける交差体は凸である」が知られている。本研究の目的の1つは点対称でない凸体から凸な交差体を構成することである。 前年度までに次の結果を得ていた。Kを、星体Lの内点pに関する動径平行体(Lをpに関して外側動径方向へ膨らませたもの)とする。ただし、Lのpに関する動径関数は2回連続微分可能とする。このとき、(1) 動径平行体の半径(膨らませる幅)を十分大きくとれば、Kは凸になり、(2) Kのpにおける交差体は凸になる。 今年度は、自身が得た成果の適切な説明文を書くために、関係する資料を購入し、関係する研究成果の概要を把握した。成果(1)の仮定「動径平行体の半径を十分大きくとる」が技術的でないことを説明する例として、主張「Lが細い円柱で、半径が(Lの高さと比べて)十分小さいならば、Lの中心に関する動径平行体は凸でない」を示した。前年度までに得ていた成果と合わせて、研究成果を論文の形にし、査読付き学術雑誌へ投稿した。この報告書を作成した時点で、投稿した論文の査読は完了していない。 関係する研究として、三角形の輻射中心の初等幾何的研究も継続した。前年度に作成・投稿した論文が査読付き学術雑誌から出版された。
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