研究期間全体を通じて、本研究課題の目標の一つである「任意の3次元閉接触多様体は強擬凹複素曲面の境界として実現可能か?」という問いを肯定的に解決し、さらに接触多様体を充填する複素曲面はケーラーにも非ケーラーにもとれることを証明した。このことが主な研究成果である。この結果は2002年にEtnyre-Hondaによって示された「任意の3次元閉接触多様体はconcave symplectic fillingを許容する」という定理のholomorphic versionと解釈することができる。また、任意の2つの3次元閉接触多様体を複素コボルディズムでつなげること、さらにそのコボルディズムはケーラーにとれることを証明した。ただし、この場合のケーラー構造は境界の接触構造との相性が悪く、得られる複素コボルディズムは必ずしもシンプレクティックコボルディズムとは限らない。この内容は現在、Daniele Zuddas氏との共著論文として学術雑誌に投稿中である。 最終年度である今年度は、この成果をケルン大学(ドイツ)の Oberseminar において発表し、複素解析が専門のMarinescu教授、接触幾何が専門のGeiges教授から高い評価をいただいた。また、この研究成果をさらに発展させていくうえで、複素幾何およびCR幾何の知識が不可欠となることを見越し、小平邦彦のコンパクト複素曲面の分類に関する一連の論文やLempertの3次元強擬凸CR多様体の埋め込み可能性に関する論文などを精読した。
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