研究実績の概要 |
平成29年度は, KAISTの共同研究者達(E.Lee, J.Song, D.Y.Suh)と旗Bott多様体という多様体のクラスを定義してそれに関する性質について研究した. 執筆した論文はarXivに投稿した(arXiv:1708.02082). 旗Bott多様体は旗多様体のバンドルのタワーの構造を持ち, 複雑性が1よりも大きなトーラス作用を持つものである. 論文では旗Bott多様体がGKM多様体の構造を持つことを示し, そのGKMグラフを具体的に計算した. また, 旗Bott多様体には代数的なトーラス(非コンパクトリー群)の作用が入ることがわかるが, その軌道の閉包(orbit closure)を取るとトーリック多様体になる. 論文ではどのようなトーリック多様体が現れるかについても特別な場合に関して考察した. このような研究は代数幾何等の他分野ではspherical variety等の研究として広く行われてきた研究ではあるが, トポロジーの立場から行うのは我々の研究が初めてではないかと思われる. 『orbit closureはどのようになるか?』という問題は他の多様体のクラスに対しても考えることができるので, 独立した問題として面白いものではないかと思われる. また, 年度末に複雑性1のGKM多様体が拡張作用を持つ場合の分類を進め, 分類に関してはほぼ半分くらい終了した. 現在までの研究をまとめると, 複雑性1のGKM多様体が拡張作用を持つ場合はほぼhomogeneousな複雑性1の多様体上のトーラス多様体バンドルの形をしていることが分かる. 個人的には全ての場合がそうではないかと予想している. 得られた結果を大阪市立大学で行われた国際会議『Toric Topology 2017 in Osaka』で講演した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旗Bott多様体の研究は研究計画には書いていない研究ではあるが, GKM多様体やGKMグラフに関する理解を深めることができた. 例えば, GKMグラフを計算することは難しいこととは認識していなかったのだが, この研究を通して一般にはそれほど易しいとは限らないことが分かった. また, 複雑性1のトーラス作用を持つGKM多様体の分類が少しだけ進んだ. 以上のことから現在までに研究は順調に進んでいると結論ずけた.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は, 複雑性1のトーラス作用を持つGKM多様体へ不変量を定義することを目標にしながら, 関係のありそうな他の研究も進めていきたいと思う. 例えば, 韓国とイギリスの共同研究者達とtorus orbifoldの同変コホモロジーの研究が現在進んでいる. この研究を進める中で, orbifoldを扱うためには今まで定義されていたグラフ同変コホモロジーの定義を少し変える必要があることが分かってきた. これは, 今後定義されるであろう不変量を定義する際も役に立つ研究になっていくと思われる.
|