研究課題/領域番号 |
17K14197
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
直川 耕祐 広島工業大学, 情報学部, 准教授 (60740826)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 可展面 / 離散化 / 特異点 / カスプ辺 / 折り紙 |
研究実績の概要 |
本研究では,特異点をもつ曲面の離散化に必要な微分幾何学的性質を明らかにするとともに,その離散的対応物の研究を行うことを目的としている.本年度の研究実績および今後の研究の展開に関する計画は以下の通りである. (1) ウィーン工科大学のミュラー氏と共同で,離散可展面上の「特異点」の形状として,カスプ辺型の特異点,および燕の尾型の特異点について定式化を行い,その定式化の下で,國分-ラスマン-佐治-梅原-山田により与えられた,滑らかな波面におけるカスプ辺と燕の尾の判定法の離散的対応物に相当する結果を得た.ただし,本研究の特異点の形状を込めた離散化では,まだ完全には識別できないタイプの特異点もあるので,これを次年度の課題とする. (2) 本田氏,佐治氏,梅原氏,山田氏と共同で,与えられた空間曲線を共通の特異曲線の像としてもち,かつ,同じ第一基本形式をもつカスプ辺(そのような複数のカスプ辺どうしのことを互いに「異性体」と呼ぶ)の個数についての研究を遂行した.研究代表者を含む梅原氏,山田氏との先行研究では,カスプ辺の異性体が2個存在するという結果を得ていたが,本研究では,空間曲線が閉じていないときに,さらに2個,合計で異性体が一般に4個存在することが分かった.与えられた空間曲線が閉じている場合も含めて,今後,研究を継続する. (3) (2) の4人と共同で,折り紙の曲線折りの研究に着手した.紙の上に与えられた曲線に沿って折り目をつけて,空間内に与えられた曲線に沿わせて紙の曲線折りを作ると,一般に,同じ折り目から2通りの折り方が出来ることは,古典的によく知られている.本研究では,さらに新しく2通り,古典的なものと併せると一般に合計4通りの折り方があることが分かった.今後も研究を継続する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で重要だと考えている離散曲面上に現れる特異点について,少しずつであるが成果が出始めている.すべてが計画通りに進んでいるわけではないが,一方で,特異点の研究から,折り紙の曲線折りの研究へと,当初全く想定しなかった新たな研究の萌芽へと繋がっている点もある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究を契機として,カスプ辺の異性体の研究から,折り紙の曲線折りの研究へと,新たな研究の方向性も得られつつあるので,その方面で発展させていく.また,それだけでなく,すでに得られた成果については,研究発表等を通じて,国内外に発信していく所存である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,参加または研究発表を予定していた研究集会が中止や延期となったため,当初の研究計画をやむを得ず執行できなかった.次年度に延期された研究集会および研究連絡に,当初予算を使用する予定である.他の計画については,今のところ変更の予定はないが,新型コロナウイルスによる社会情勢への影響に依存すると思われる.可能であれば,柔軟に使用計画を検討したい.
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