研究課題
ケーラー多様体上の多重劣調和函数のレビ形式の台集合について研究した。このような集合は申請者の研究によってケーラー多様体上のベクトル束のコホモロジーと深い関係があることがわかっている。特に多重劣調和函数を正則切断に対応するものを取ると、そのレビ形式は正則切断が定める超曲面上での積分に超関数として一致する。よって台集合は超曲面となり、これから古典的なレフシェッツの超平面定理の一部が得られる。このことからレフシェッツの超平面定理は解析的な対象へと一般化できる。多重劣調和函数の利点は滑らかな関数だけでなく、特異点も許容することであり、これをトロピカル幾何に応用して研究できないかを探った。代数トーラス上でローラン多項式のトロピカル化を考えたとき、自然な多重劣調和函数が得られる。この多重劣調和函数は代数トーラス上でアファイン関数のマックス関数で与えられ、この関数が微分できない集合がレビ形式の台集合と一致する。マックス関数が微分できない集合は二つ以上のアファイン関数が最大を取る集合と一致するが、より多くのアファイン関数が最大を取る集合を考えることで、レビ形式の台集合を一般化した、モンジュ・アンペールカレンとの台集合が現れることがわかった。このような集合はアファイン関数のマックス関数のルシャンドル変換を行なった凸関数が生成する多面体分割にも対応する。このような離散的構造をもつ対象を多変数関数論の手法で研究したともいえる。
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Jounal of Mathematical Scienses, University of Tokyo
巻: 30 ページ: 107--123