研究課題/領域番号 |
17K14201
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯野 優介 京都大学, 数理解析研究所, 特定助教 (80783076)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | III型フォンノイマン環 / Intertwining theorem / 冨田・竹崎理論 |
研究実績の概要 |
フォンノイマン環とは,(簡単に言えば)無限次元の行列環の事である.特にトレース写像を持たない場合に,III型フォンノイマン環という.これは物理学にも現れる自然な研究対象であり,私はこれを数学的な視点から研究している.本研究は,トレース写像を持つ場合に得られた近年の研究結果を,III型の場合に再現する事を基本的目標としている. 近年の技術的発展の核となる,intertwining theoremと呼ばれる基本的技術がある.この技術をIII型フォンノイマン環に対して再現する事は,本研究の大きな目標の一つであった.私は今年度の研究で,この問題に対する大きな進展を得る事が出来た.III型フォンノイマン環の研究には,冨田・竹崎理論と呼ばれる理論が必要となる.そこでの最重要アイテムはモジュラー作用と呼ばれるもので,これを解析する事がそのままフォンノイマン環を解析する事になる.私は今年度の研究で,上記のintertwining theoremとこのモジュラー作用を組み合わる事に初めて成功した.結果として,これまで強く期待されていた性質が,適当な変更のもとで成り立つ事を証明した.この性質そのものには反例が見つかっており,だからこそ今回の発見には極めて重要な意義がある. この定理の応用として,「群作用の事を完全に覚えているフォンノイマン環」の真に新しい例を構成する事が出来た.このような例を探す事は,近年のフォンノイマン環論で最も重要な問題であり,今回のような真に新しい例は極めて価値が高いと言えるだろう.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように,想定していた以上に重要な定理を得る事が出来たから.また本研究の具体的目標である,群作用フォンノイマン環への応用も得る事が出来たから.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続きIII型フォンノイマン環の構造研究を続けて行く.今年度の研究で得られた重要な定理は,今後も多くの場面で基本的道具となる事が期待されている.実際,現在行っている新しい研究でもすでに役に立っているし,今後はこれを踏まえた新しい視点での研究が出来るだろう.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度から30年度にかけての計画が変わったため,金額にずれが生じた.金額は大きくないので,今年度の計画の中で使いきる予定である.
|