研究課題/領域番号 |
17K14205
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
堀田 一敬 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10725237)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | レブナー理論 / 等角写像 / 義等角写像 / 確率微分方程式 / シュラム・レブナー発展 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下のような研究を行った. 1.複数本のスリットを像領域に持つような等角写像の力学系とレブナー方程式との関係性についての研究を進めた.2016年には各スリットの重みが均一であるような場合のシュラムレブナー発展方程式(以下SLEで記す)の研究がなされたが,今回はさらに進んで重みが均一でないような場合のSLEを扱った.KozdronとLawlerにより導入されたMultiple SLEの測度から導出される確率微分方程式から,スリットの本数を無限大にした時に現れる微分方程式を導いた.結果として複素バーガーズ方程式を発展させた微分方程式を得ることができた. 2.上記の結果に類似して,重みが均一であるような場合のバーガーズ方程式を具体的に解き,そのふるまいを可視化した.具体的にはスリットの基点が実軸上の1点の場合,2点の場合をそれぞれ扱った.さらに等角不変性の観点から,時間を十分大きくすれば両者の描く境界曲線は一致することも確認した. 3.レブナー方程式,特にそのHerglotz関数を具体的に与えたときにどのような等角写像族が現れるかを計算機で可視化するプロジェクトは無事に終了し,論文は数学の国際専門誌に掲載された.一方で今回扱った方程式はradialなものであるため.chordalの場合にもうまく処理できるかは興味深い問題として残っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は具体的な等角写像のふるまい解析する事で多重スリット領域の動きを制御しようと試みたが,単純な場合でも制御には困難が伴うことが判明した.そこで既存のmultiple SLE measureの概念から出発することで,各種の結果を得ることができた. レブナー理論の核である発展族と正則ベクトル場の正則依存性の研究は基本的な解析が終了し,正則ベクトル場の族がある種の条件を満たせば,それに伴い生成される発展族の局所一様収束性が従うことがわかった.また正則ベクトル場に複素パラメータをうまく導入することで,正則運動の構造も見いだせることがわかった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は次のような研究を進めていく. 1.複数本のスリットを像領域に持つような等角写像の力学系とレブナー方程式との関係性についてはある程度の結果を得ることが出来たが,これらは全てchordalの微分方程式をもとにしている.類似の結果をradialの場合にも見いだせるであろう事は容易に想像できるが,その議論は全て平行にいくというわけではない.よってまずはradialの場合に関する議論を進める. 2.重みが均一であるような場合のバーガーズ方程式の明示的な解についても同様に,radialの場合にそのような発展の仕方をしていくのかを研究する.まずは特性曲線法を用いて具体的な解を構築する. 3.より一般的な視点から,レブナー方程式の解空間の解析を進めたい.最近普遍タイヒミュラー空間をレブナー方程式の言葉で定義できることが証明された.これを用いて,タイヒミュラー空間の観点から解空間がどのように見えるのかを解析していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
共同研究を行うために日本に招聘予定だったグメニュク氏との都合がつかず,次年度にもつれ込んだため.氏は平成30年度に日本に招聘する方向で現在調整中である.
|