平成30年度は29年度に引き続き確率微分方程式の解の最大値に対する、確率密度関数および金融商品のリスクに関する研究を行った。前者に関しては、前年度に投稿していた論文が受理されたが、その論文で扱った内容に関して新たな問題が現れた。それは離散時間最大値と連続時間最大値の間の収束の早さに関する問題である。この論文では確率微分方程式の係数がある程度良い条件を満たせば、離散時間最大値の密度関数が連続時間最大値の密度関数に収束することが示されているが、収束の早さまでは得られていない。そこで、まず最も簡単なブラウン運動についてこの問題を考えた。尚、この問題は連続時間最大値の下からの評価の問題にも密接に関係している。 ブラウン運動の場合、連続時間最大値の密度関数の表現が知られており、さらに離散時間最大値の密度関数が有限次元分布を用いて表現できるが、その表現は非常に複雑になっている。収束の早さを得るためには、これの良い表現を得ることが必須であると思われるため様々な表現を考察したところ、ある程度良い表現を得られることがわかった。平成30年度はこの問題を考察するとともに、前述の論文の内容をいくつかの国内外の研究集会にて発表した。 リスク計算に関しては、林正史氏(琉球大学)との共同研究により、平成29年度に得られていた結果を考察し、リスクのモンテカルロシミュレーションなどの数値計算を行い易い表現を得るべく研究を行い、ある程度良い表現を得ることが出来たが具体的な金融商品に対する数値計算までは至らなかった。 この結果に関しては、研究者のみならず金融の実務家に対しても発表を行い、より良い表現を得るための助言を受けた。
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