研究課題/領域番号 |
17K14214
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
内免 大輔 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20783278)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Trudinger-Moser不等式 / 楕円型方程式 / 臨界問題 / 集中現象 / 変分法 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究ではTrudinger-Moserr型非線形楕円型方程式の球対称符号変化解の集中挙動について詳しい解析を行った。これまでの研究により,あるパラメータ極限において低エネルギー球対称符号変化解の正の部分が集中現象を起こし,負の部分が当該方程式の定符号解に収束することを示すことに成功している。これに対し,当該年度の研究ではこの発展課題として,エネルギー有界な任意の球対称符号変化解に対し,どのようなパラメータ極限において,どのような集中挙動が起こり得るのかを考え,その起こり得る全ての可能性を網羅することに成功した。これにより,上述の先行研究で既に発見されている集中挙動だけでなく,パラメータ極限の取り方によっては,集中解の一部分が当該方程式の符号変化解へ収束するような挙動が起こり得ることや,集中解の一部分が自明解に収束し,その概形がラプラス作用素の固有値問題の固有関数で与えられるという新しい挙動が生じ得ることが示された。さらにそれらの解の集中部分の概形がLiouville方程式と呼ばれる極限方程式の古典解で与えられることを証明するとともに,集中解の極大値,極大点,および零点の漸近挙動をパラメータを用いて精密に評価することにも成功した。また,上述の結果から示唆されるいくつかの新しい集中現象が実際に起こるかどうかを調べることは重要である。当該年度の研究では,適当なパラメータ極限において,零点を多く持つ低エネルギー符号変化解が集中現象を起こし,解の一部分が符号変化解に収束することを証明することに成功した。これらの結果は一編の研究論文としてまとめ専門誌に投稿し出版内定を得た。(2021年4月に既に出版された)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的は達成され,発展的研究課題に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究によって,当該方程式においては,当初予想していた集中現象以外にもパラメータ極限の取り方によって多様な集中現象が起こり得ることが示唆された。次年度の研究では,ここで示唆された新たな集中解が実際に存在することを証明することを目的とする。特に「解の一部分が自明解に収束し,その概形がラプラス作用素の固有値問題の固有関数で与えられる」球対称符号変化集中解の存在を当該年度の研究では証明できなかったため,これを証明することを目指したい。このことが当該年度達成できなかった要因の一つとして,当該年度の研究では球対称符号変化解の漸近挙動を調べる際に常に解のエネルギー有界性を仮定していたことが挙げられる。逆に,このエネルギー有界性の仮定を除くことができれば,関連する半線形臨界楕円型方程式の球対称符号変化解に対する諸研究(Atkinson-Brezis-Peletier(1990)等)で用いられている``shooting method"により,目的の集中解を構成することが可能であると期待される。そこで次年度の研究ではまず当該年度に得られた結果をエネルギー有界とは限らない一般の球対称符号変化解に拡張することを目指す。このために,上述のAtkinson-Brezis-Peletier(1990)等の関連研究の手法を習得し,当該方程式への応用を試みる。これが達成され次第,これまで得られた多様な集中解が一般の有界領域においても存在することの証明に取り掛かりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行に伴い,いくつかの海外出張および国内出張が中止となったため。次年度には研究設備(PC,印刷機)の整備費および国内出張費として用いる。感染症流行の状況が改善次第,研究協力者との研究討論のために海外出張費としても用いたい。
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