当該年度は,当該方程式が優指数型かつ劣臨界型の非線形性を持つ場合の符号変化解の爆発挙動について研究を行った。前年度までに解の正の部分の解析を終えており,その結果に基づいて負の部分の解析を進めた。その結果,負の部分の最大点のまわりで解を適切にスケールし極限方程式と関連付けることにより,解の形状とエネルギーについての明示的な漸近公式を得ることができた。今後は劣指数型の非線形項に対して同様の解析を進めたい。本研究課題への取り組み全体を通して,まず,当初の目標であった円盤領域における当該方程式の最小エネルギー球対称符号変化解の漸近挙動の解析を完成させることができた。特に,解の正の部分は最大点の周りに集中し,一方で負の部分は爆発せず,ある正値解に強収束することを示した。これは臨界型方程式の持つ非コンパクト性の象徴である集中現象とそれとは対照的なコンパクト性が共存する符号変化爆発解ならではの挙動として興味深い。本結果はローマ大学のM.Grossi氏との共著論文として学術論文誌より出版された。さらに本成果の発展的課題として,一般の有界領域における符号変化爆発解の構成に挑戦した。その準備として一般の有界領域における正値解の非退化性の証明に取り組んだ。これについては,当該方程式の持つ指数型の強い非線形性に起因する種々の困難のためにこれまでのところ未解決であり,現在も研究進行中である。一方で,先の成果のもう一つの発展課題として,円盤領域における最小エネルギー解とは限らない一般の球対称符号変化解の漸近挙動の解析を行った。これにより,非線形項がある種の強い摂動項を持つ場合において,球対称符号変化解の爆発挙動を完全に分類することに成功した。ここでは複数の集中部分と複数のコンパクト部分が共存する多様な符号変化爆発挙動を精密に分類することができた。当該結果も学術論文として専門誌から出版された。
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