研究課題/領域番号 |
17K14217
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
阿部 健 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80748327)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナヴィエ・ストークス方程式 / 軸対称解 / 外部問題 |
研究実績の概要 |
ナヴィエ・ストークス方程式の初期値境界値問題について2次元外部問題と3次元軸対称解の正則性を研究した. 2次元外部問題については有界かつディリクレ積分有限となる非減衰初期値に対して, 外部領域における2次元ナヴィエ・ストークス方程式の時間大域可解性を示し, 系としてレイノルズ数が高い場合にも漸近的に定数になる時間大域一意解が存在することを証明した. この結果はArchive for Rational Mechanics and Anaysisから単著論文として出版された. また3次元軸対称初期値に対するナヴィエ・ストークス方程式についても研究を行った. 初期速度場の方位角成分(旋回)が恒等的にゼロにならない場合には, 軸対称初期値に対するコーシー問題の時間大域可解性は得られていないが, 本研究では対称軸を含むシリンダーの外部において滑り境界条件のもとでの軸対称流を考察し, 初期値がL^3可積分かつエネルギー有限となり旋回成分が減衰条件を満たせば大きな旋回をもつ時間大域一意解が構成できることを証明した. この結果はProceedings A of the Royal Society of Edinburghから出版見込みとなった(G. Seregin氏(University of Oxford) との共著) . その他にはシリンダー内における軸対称旋回なし解の研究を行なった. 軸対称旋回なし初期値に対しては時間大域一意解の存在が知られているが, 初期条件の正則性はH^{1/2}程度を仮定していた. 本研究ではL^{p}理論を考案し, 粘性消滅法により弱い初期正則性条件のもとでオイラー方程式の弱解を構成した. この結果は2編の草稿に纏めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元外部問題と3次元軸対称解の正則性を並行して進めている. 2次元外部問題は定常解に関する未解決問題(空間無限遠方の挙動, 安定性)解決に向けて, 外部ストークス流, コーシー問題の解のL^{infty} 評価, 半空間のリュービル型定理などの研究を進めている. ストークス流のL^{infty}評価は, 研究代表者の先行研究により任意の固定した時刻までの評価が得られているが, 時間無限大まで込めた評価が得られるかが課題である. これに関連して非線形のL^{infty}評価の研究も行なっている. これらの問題は現在のところ解決に至っていない. 今後はリュービル型定理の観点から研究を進める予定である. 3次元軸対称解の正則性については旋回がない場合のL^{p}理論の研究を進めている. 旋回がない場合にシリンダー内での軸対称初期値に対する初期値境界値問題を考え, 初期速度場がL^{p}可積分となる場合に時間大域解が構成できることを証明した. 時間局所解の構成には古典的なL^{p}理論をシリンダーに対して拡張し, 時間大域解は渦度方程式を解析することにより示した. さらに構成した時間大域解に対して粘性消滅法を適用し, オイラー方程式の弱解を構成した. これらの結果は2編の草稿として纏めた. 2次元外部問題については研究計画当初ほど進展は得られていない. 一方で軸対称解の研究についてはオイラー方程式の時間局所適切性やオンサガー予想との関連が見つかり大きな進展があった. 以上より, おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
2次元外部問題についてはストークス流のリュービル型定理から時間無限大の評価の研究を進める. 空間次元が3次元以上の場合には全空間からの摂動によりストークス流の時間無限大のL^{infty}評価が得られることがマレモンティ氏(UC Luigi Vanvitelli)により発表されている. しかし2次元の場合には未解決であり, 見通しの良いアプローチが必要である. 本研究ではL^{p}評価のように明快な証明を与えることを目的とする. また半空間の定常解の研究も進める. 軸対称解の研究については時間局所適切性, オンサガー予想との関係について詳細な解析を行う. 先行研究では軸対称旋回なし初期値が適当に滑らかとなる場合にオイラー方程式の弱解を構成したが, 初期値の正則性には改善の余地がある. 本研究では2次元レイヤーでの解析から初期値の正則性が低い場合に弱解を構成する研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
大学から本年度限りでの研究費の支給があり, 本年度旅費として使用予定であった研究費を次年度に繰り越した. 繰り越し分は次年度旅費として使用する.
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