研究課題/領域番号 |
17K14220
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
平山 浩之 宮崎大学, テニュアトラック推進機構, 講師 (90748328)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 非線形分散型方程式 / 散逸項 / 初期値問題 / 適切性 / Zakharov-Kuznetsov方程式 / Burgers方程式 / KdV方程式 |
研究実績の概要 |
本研究では、KdV方程式の多次元版であるZakharov-Kuznetsov方程式(以下、ZK方程式)に、空間1方向の散逸項を加えたZakharov-Kuznetsov-Burgers方程式(以下、ZKB方程式)の初期値問題の適切性(解の存在、解の一意性、初期値に対する解の連続依存性)を、空間2次元の場合について調べた。特に、正則性の低い初期値に対しての適切性を得ることを目的とした。 ZKB方程式は分散性、散逸性、非線形性の3つの性質を兼ね備えた方程式であり、これらの性質を上手く利用することで、より正則性の低い初期値に対する適切性が得られる。分散性を持つ非線形方程式では、非線形相互作用による共鳴現象の解析が重要である。しかし、ZKB方程式の共鳴構造は非常に複雑であるため、本研究では分散性と散逸性を精密に扱った。 ZKB方程式の1次元版であるKdV-Burgers方程式については既に先行研究があり、その適切性は、散逸性を持たないKdV方程式および分散性を持たないBurgers方程式のどちらよりも、正則性の低い初期値に対して得られている。これは、分散性と散逸性が共存することで、方程式の構造により良い影響を与えていることを意味する。本研究では、ZKB方程式に対して同様の結論を得ることが出来た。 ZKB方程式は前述のように、1方向のみの散逸項しか持たない。したがって、自然に期待される結論は、散逸性を持たないZK方程式に比べて1方向のみの正則性が低い初期値に対する適切性である。しかし、本研究で得られた結果は、ZK方程式に比べて全方向の正則性が低い初期値に対する適切性である。このことから、1方向のみの散逸性が加わったことで全方向に良い影響を与えることが明らかになった。これは、元々方向が1つしかない1次元の場合には見られない2次元特有の現象である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZKB方程式に対して、期待していたよりも広い関数空間における適切性が得られたため、ここまでの状況は順調であると言える。ただし、得られた結果が最良であるかどうかはまだ未解決である。これは共鳴構造が複雑であるために、その構造を十分に解明出来ていないことが原因である。今後の研究の中でZKB方程式の共鳴構造の解明に進展があった際には、適切性に関する結果の改善も試みたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ZKB方程式の散逸項にパラメーターを乗じ、そのパラメーターが0になるような極限を考えた際の解の挙動について調べる。特に、ZK方程式の適切性が得られていない初期値の場合に、ZKB方程式の解の極限がどのような関数に近づくのかを明らかにすることが目的となる。また、現在までの研究では2次元の全空間での問題のみを扱ったが、周期境界条件を与えた場合についても考察を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究では、散逸効果を扱うのに慣れていなかったため、成果がある程度形になるまでに時間を要した。そのため上半期には、本研究に関連する成果の発表や打合せ等に伴う出張の機会がほとんど生じず、予定していたよりも助成金の使用金額が少なくなった。 翌年度は、成果の発表や打合せの機会が増えることが予想されるため、新たに請求した助成金は主に出張旅費に充てる。また、前年度からの繰越し分については関連する内容についての書籍購入や、毎年本学で開催している研究集会「PDE Workshop in Miyazaki」、「数学と現象」における講演者の招聘費に充てる。
|