研究課題/領域番号 |
17K14220
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
平山 浩之 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (90748328)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 非線形シュレディンガー方程式 / 初期値問題 / 適切性 / 共鳴 / エネルギー法 |
研究実績の概要 |
当該年度は前年度に引き続き、レーザーとプラズマの相互作用を記述する非線形シュレディンガー方程式系の初期値問題に取り組んだ。この方程式系は線形部分にパラメーターを含み、その値の取り方によって非線形相互作用による共鳴構造に違いが現れる。また、非線形項には1階の微分が含まれ、そこから生じる可微分性の損失を非共鳴性によって解消することが、適切性を得る際の鍵となる。 前年度までの研究により、高周波同士の相互作用から高周波が生成される際にしか共鳴が生じない場合については、逐次近似法の枠組みで適切性が得られるためのソボレフ指数の範囲についてはほぼ明らかになっている。一方で、高周波と低周波の相互作用から高周波が生成される際に共鳴が生じる場合については、非共鳴性を用いることが出来ず初期値から解への写像が滑らかにならない。したがって、逐次近似法で解を構成することは出来ない。 本研究では、逐次近似法の代わりにエネルギー法を用いることで適切性を示すことを試みた。(木下真也氏、岡本葵氏との共同研究) ただし、通常のエネルギー法では強い特異性を持つ項が残ってしまうため、エネルギー評価を得ることが出来ない。そこで、そのような項を相殺するためにエネルギーの修正を必要とした。その結果、適切性が得られるための線形部分のパラメーターに対する仮定を緩めることに成功し、高周波と低周波の相互作用から高周波が生成される際に共鳴が生じる場合でも適切性が得られることが明らかになった。この結果は、方程式系を構成する方程式のいずれかが分散性を持たない場合にも適切性が得られるという興味深い結論も含んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形シュレディンガー方程式系について、逐次近似の枠組みで扱うことが出来ない場合にも適切性を得ることに成功した。その結果については既に論文にまとめており、査読付き雑誌に投稿中である。 また、2019年度、2020年度の研究でそれぞれ結果が得られて論文投稿中であった、非線形項に3階の微分を含む非線形4階シュレディンガー方程式の適切性についての論文、および非線形シュレディンガー方程式系の適切性についての論文が査読付き雑誌に掲載された。 以上のことから、状況は順調であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は前年度以前から研究を行っているZakharov-Kuznetsov-Burgers方程式(以下、ZKB方程式)の解の漸近挙動の解明について引き続き取り組む。前年度までの研究で得られた線形解の振る舞いおよび非線形の解に対するエネルギー評価の見直しを行い、解の漸近系の特定を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた出張および研究集会の対面開催が困難となった。そのため、出張や招聘の旅費の支出が少なくなり、次年度使用額が生じることとなった。次年度は研究遂行の際に必要となる出張に予算を充てる。ただし、研究集会等の対面開催が困難な場合にはオンラインでの開催が主体となるため、Web会議に用いるための物品費に予算を充てる。
|