リーマン球面上に不確定特異点を持つ微分方程式をFuchs型微分方程式の合流として構成する問題を考え,次のような成果を得た.微分方程式の不確定特異点はどんなものでも素朴には確定特異点の合流として得ることができる.ただし我々は微分方程式の大域的,局所的な不変量を保存する,またはその変化が追跡可能であるような合流操作を考えたい.こうした「良い」合流操作による微分方程式の族は高々不分岐な不確定特異点をもつリジッドな方程式に対して大島利雄によって構成されている.我々はこれをアクセサリーパラメーターをもつリジッドではない微分方程式に以下のように拡張をした.まず,不分岐不確定特異点の福原-Turrittin-Level標準形の同型類をゲージ変換群の余随伴軌道とみなし,これら余随伴軌道の複素解析的な族を微分方程式の特異点の合流に対応して構成した.これを用いることで微分方程式のモジュライ空間の変形を構成することができる.そしてこの変形の局所切断をとることで微分方程式の複素解析族を得る.これが特異点の合流による微分方程式の族となる.こうした族はHeunの微分方程式の合流の族や,川上-坂井-中村による4次元のアクセサリーパラメーターを持つ微分方程式の合流族など,知られている微分方程式の族を含む自然なものとなっている.
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