一つ目の研究は、赤堀氏(静岡大)、Ibrahim氏(ビクトリア大)と名和氏(明治大)との共同研究の下、空間3次元におけるエネルギー臨界項を含む二重べきの非線形シュレディンガー方程式を考えた。具体的には、その基底状態値を考えた。ここで、基底状態とは、方程式に対応する作用汎関数をある制約条件の下で最小化問題の最小元であり、基底状態値はその最小化問題の下限とする。これまでの研究から、ある臨界振動数が存在して、その臨界振動数より小さい振動数のときは、基底状態が存在し、大きいときは、基底状態が存在しないことが分かっている。そこで、基底状態に対応する楕円型方程式の非自明な解の中での作用汎関数の下限と基底状態値を比べた。すると、基底状態値は、解の中での作用汎関数の下限より真に小さいことが分かった。 次に、渡辺氏(津田塾大)との共同研究の下、非線形シュレディンガー方程式で、質量臨界べきとエネルギー臨界べきの両方を含んだ非線形項を考えた。具体的には、基底状態の存在を示した。さらに、その基底状態を用いて、あるポテンシャル井戸を構成し、その井戸から出発した球対称な解は有限時間で爆発することを示した。 三つ目に、Bahri氏とIbrahim氏(ともにビクトリア大)の共同研究の下、シリンダー上における非等方性シュレディンガー方程式の線ソリトンの安定性と基底状態を調べた。ここで、線ソリトンとは、一次元のシュレディンガー方程式のソリトンのことである。具体的には、ある臨界振動数ω_{s}が存在し、線ソリトンの振動数がω_{s}より小さいときは安定で、大きいときは不安定であることが分かった。さらに、もう一つ別の臨界振動数ω_{g}が存在し、ω_{g}より小さい場合、基底状態は線ソリトンになり、その振動数より大きい場合、線ソリトンは基底状態ではないことが分かった。
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