【令和2年度に実施した研究の成果】(1)全空間が非コンパクトな界面により上下の領域に分けられている場合を考察した.上側の流体の密度が下側の流体の密度よりも小さいという仮定の下で,線形化問題の解の時間減衰評価を導出した.(2)(1)の場合と同じ状況において,上下の流体の密度が等しい場合を考察した.この場合には,レゾルベント問題に付随するロパチンスキー行列式の零点の漸近展開が(1)の場合とは異なることを確認した.これにより,密度が等しい場合と(1)の場合とでは解の時間減衰の速さが異なることが予想される.(3)非すべり境界条件を伴うナビエ・ストークス・コルトベーグ方程式を有界領域において考察した.臨界条件を含むような条件の下で,線形化作用素が生成する半群の指数安定性を示し,それと最大正則性定理を組み合わせることで十分に小さな初期値に対して時間大域的な解の一意存在定理を証明した. 【期間全体を通じて実施した研究の成果】コンパクトな界面を伴う二相流に対しては,時間大域的な解の一意存在定理を示すことができた.さらに,一般領域における二相流に対して,ある弱楕円型問題の一意可解性を仮定することで,時間局所的な解の一意存在定理を示した.上述の(1)の場合では,線形化問題の解の時間減衰評価を示すことはできたが,その非線形問題への応用まではできなかった.これは,ロパチンスキー行列式の零点の解析に困難が生じ,その部分で当初の予定よりも多く時間がかかってしまったことに起因する.また,気液相転移を伴う二相流の拡散界面モデルとして知られるナビエ・ストークス・コルトベーグ方程式について考察した.同方程式に対して一般領域上での半群の生成や最大正則性などを示し,新しい知見を得ることができた.
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