研究課題
本研究の目的は、2次元常微分方程式系の解の螺線軌道の長さとフラクタル次元を測り、漸近安定性の度合いを数値化した指標を手がかりに、フラクタル解析による安定性理論を構築することである。本年度はフラクタル次元を測る際に重要となる解のε近傍に着目したハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)を主として扱った。ハイヤーズ-ウラム安定性とは、微分方程式(または、差分方程式)における近似方程式のを考察し、その基となる方程式との差がεであるとき、それらの解同士の差に定数倍のεしか誤差が生まれない場合を言う。より具体的には、近似解の定数倍のε近傍内に厳密解が常に存在する場合をHUSと呼ぶ。本年度は次年度に引き続きハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)の研究を推し進めた。本年度は、1階周期線形微分方程式、Hill方程式(2階周期線形微分方程式)、hステップサイズをもつ差分方程式、ケーリー型h-差分方程式、ダイヤモンドアルファ差分方程式に対するハイヤーズ-ウラム安定性を考察し、その多くで最良のHUS定数を導出することに成功した。HUS定数とは、先述の「定数倍のε近傍」における「定数倍」に当たる定数で、厳密解と近似解の誤差を表す。したがって、この値が小さいほど誤差の精度が良いと結論付けることができる。当該研究では、無限の時刻において最小となるHUS定数を発見し、それが最小であることの証明を行った。加えて、無限の時刻においては、近似解の定数倍のε近傍内に留まる厳密解は唯一であることも証明した。また、京都大学数理解析研究所において、研究集会「常微分方程式における最近の動向とその発展 」部屋: 111号室、期間: 2019-11-13~2019-11-15、代表者: 鬼塚 政一(岡山理科大学理学部)を開催し、D. R. Anderson氏(Concordia College)を招聘することで、共同研究を推進した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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