研究課題/領域番号 |
17K14228
|
研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
田中 吉太郎 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80783977)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 反応拡散系 / 非局所相互作用 / 反応拡散近似 |
研究実績の概要 |
この研究課題の目的は,様々な空間と境界条件上で積分核付き相互作用を反応拡散系で近似し,積分核付き相互作用をもつ発展方程式の1つの解析手法を確立することである.この積分核付き相互作用は,実験などからその定性的な形状がわかると,数値計算から発生するパターンを容易に調べることができるという利点がある.これらの数値計算から得られるパターンは,縞模様や,斑点模様など反応拡散系で得られるパターンに非常に似ているが,積分核付き相互作用をもつ発展方程式と反応拡散系の関係は不明であった.また,積分核を構成する背後にある各因子間の相互作用やネットワークの構造を調べるのは難しい.これらのことを動機として,研究代表者らは,与えられた非局所相互作用に対して,反応拡散系に書き換える方法を提案した. 初年度は1次元空間上での積分核付き相互作用と反応拡散系の関係について理論的な結果を得た.1次元周期境界条件上では,任意の積分核をもつ非局所発展方程式の解が,ある補助的な拡散物質を重ね合わせることで,その反応拡散系の解で近似できることを示した.この理論から,ある積分核が拡散誘導不安定化を引き起こすことを理論的に示し,積分核付き相互作用の一つの役割を明らかにした. 平成30年度は,1次元上で得られた積分核付き相互作用に対する反応拡散近似の結果を2次元トーラス上に拡張することを念頭に,与えられた積分核付き相互作用をもつ発展方程式を近似するための反応拡散系を提案した.その特異極限をとることで得られる楕円型方程式の基本解の表示式を求めた.今後はこの基本解を重ね合わせることで,与えられた積分核が近似できるかどうかを調べる.また2次元トーラス上で積分核付き相互作用をもつ発展方程式の解が反応拡散系の解によって近似できるかを調べていく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1次元空間の問題に関しては概ね満足のいく結果が得られたが,2次元の問題に関してはまだ十分に考察されていない.このことが進捗の遅れていることの理由である.
|
今後の研究の推進方策 |
上記の1次元空間上で得られた反応拡散近似の結果を2次元に拡張することが主目的である.2次元ユーグリッド空間やトーラス上で提案した近似のための反応拡散系の特異極限の基本解の表示式は得られたので,その重ね合わせによって,与えられた積分核が近似できるかを調べる.そのあとに,エネルギー法を用いて,積分核付き相互作用をもつ非局所発展方程式が反応拡散系で近似できるかを調べる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入による端数を繰り越した.計算機と消耗品の購入に充てる予定である.
|