研究課題/領域番号 |
17K14231
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 善宏 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (20761290)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 圏論的意味論 / 証明論的意味論 / 圏論的量子力学 / 情報物理学 / 人工知能の限界 / フレーム問題 / ルーカス・ペンローズの議論 / 圏論的統一科学 |
研究実績の概要 |
本年度は主として、圏論的意味論に基づく普遍カリー・ハワード対応についての研究と、情報・AI・データ科学における双対性の概念的意味を解明する研究を行い二編の論文が出版受理された。証明論的ハーモニーは論理定項の証明論的意味論の主要概念だが、シュレーダー・ハイスターにより初めて与えられたハーモニーの一般理論は、論理定項を定義するための一般的メカニズムを高次元に拡張された自然演繹体系のシステムの中で与える。本研究ではそのように一般的に定義される任意の論理定項に対して圏論的意味論を与える為のメカニズムを構築した。これは「論理結合子が任意に与えられた時それにカリー・ハワード対応する圏論的構成は何か」という問いに対する回答を与えるもので、一般に「論理定項とは何か」ということを圏論的観点から明らかにするものである。同時に、このメカニズムを逆向きにみれば、これは様々な圏論的構成の論理学的な一般理論としての「論理的圏論」を与えるものとしても捉えることができる。シュレーダー・ハイスターは同じ一般理論の中でパラドクスを生む論理結合子についても分析している。本研究は、そのようなパラドクスを生む論理結合子の持つ構造が、圏論的意味論を通じて解釈すると、ヒルベルト空間などの数学的構造の圏の中に自然に現れることを明らかにもした。例えばラッセルパラドクスを生むラッセル定項は実は圏論的量子力学に現れる圏構造の中では整合的に解釈することができるのである。これは、京都大学・総長賞を受賞した以前の論文で得た、命題の構造が矛盾し崩壊するということと、証明の構造が矛盾し崩壊するということの相違という洞察に対して、新たな一例を付け加えるものとしても重要な知見である。さらに双対性方面では、フレーム問題やルーカス・ペンローズの議論等の人工知能の原理的問題やデータ科学の知識特性について双対性理論的な観点から新たな知見を導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圏論的意味論についても双対性についても、本年度の研究の中で当初のアイデアの多くが実際に実現可能なものと判明してきており、従って本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの二つの柱は圏論的意味論と双対性であるが、本年度は主として圏論的意味論の研究に集中的に注力し双対性の研究はその為の予備的的論文の出版に留める方策をとった。今後は双対性研究にその重点を移行し更なる深化を追求してゆく。また同時に圏論的意味論の研究においてもすでに得られた成果の帰結を詳しく分析し応用を与えることで更なる拡がりを追求してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の物品が想定より安く購入できた為生じた21,321円を次年度の消耗品購入費のために使用する。
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