研究課題
「双対性」は、数学(空間と代数の双対性)、物理学(状態とオブザーバブルの双対性)、情報学(システムとその挙動性質の双対性)等を横断して広範に観察される数理現象である。本プロジェクトの双対性方面での研究は、そういった数学・物理・情報を横断する双対性を統合するための数理理論を圏論や普遍代数の言語により精密かつ有用に与えることをその眼目とするものである。またそしてそれにより双対性に関わる既知の未解決問題を解決することを目指す。特に焦点をあてるのはBart Jacobsの残した分布モナドの代数に関する二種類の双対性問題である。このうち一種類の未解決問題については圏論的トポロジーに基づく研究代表者の双対性理論の系としてドメイン理論的な構造を用いた解決法が得られている(その結果はすでに出版されBart Jacobsの後の論文でも引用されている)。もう一種類のエフェクト代数に関わる未解決問題については研究代表者により構築されたChu空間に基づく双対性理論の応用による解決を目指しているところでありその中でMV代数の双対性と同種の双対性の存在が明らかになりつつある。本研究は「数学的双対性」から「科学的双対性」までをも含む圏論的双対性の理論構築に取り組むものであるが、この種の双対性は特に量子物理における状態とオブザーバブルの双対性の変種として理解できその意味でも有意義なものである。数理科学・工学の歴史において如実に示されているように「双対性」は豊かな数理的構造を具有すると同時に有益な工学的応用をも生んできた。有用な技術の背後で双対性がその原理を統制しているということも珍しくない。本研究では特に機械学習のカーネル法の背後に存在するある種のChu空間と再生核ヒルベルト空間の間の二種類の圏論的双対性の性質の解明に取り組んでおりその基本的性質の幾つかが代表者の研究により既に明らかとなっている。
2: おおむね順調に進展している
圏論的意味論についても圏論的双対性についても、構想段階における抽象的概略的なアイデアを具現化する形で具体的な肉付けを伴った成果が得られてきており、本研究は概ね順調に進展していると言える。
本プロジェクトの二つの柱は圏論的意味論と圏論的双対性である。本年度は主として圏論的双対性の研究に集中的に注力した。そのため圏論的意味論の研究は成果の発表と公刊に留めた。今後は双対性研究において残された問題の完全解決に取り組む。それと同時に圏論的意味論の研究においてもすでに得られた成果を周辺テーマと関連づけることでさらなる深化発展を目指す。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Proceedings of Proof-Theoretic Semantics Conference
巻: vol. 3 ページ: forthcoming
Springer SAPERE
巻: 44 ページ: 207-211
巻: 44 ページ: 194-206