研究課題/領域番号 |
17K14234
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原本 博史 愛媛大学, 教育学部, 講師 (40511324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 擬似乱数 / 統計的検定 |
研究実績の概要 |
擬似乱数生成法を評価する際、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の統計的検定パッケージが広く用いられている。このパッケージに含まれるいくつかの検定法に対し、二重検定時に第1段階の近似誤差が第2段階の検定に与える影響をカイ二乗食い違い量を用いて評価し、第2段階のサンプルサイズの上界を与えた。特にPareschi, Rovatti, Settiの連検定に対する効率的なp値の近似計算方法を利用して、頻度検定と階数検定と合わせ3種類の検定に対しての上界を得ることができた。これにより、これまでのサンプルサイズでは棄却できなかった線形合同法による擬似乱数生成法を頻度検定でも棄却できるなど、検出力を向上させることが可能となった。この結果に関して広島大学の松本眞教授と共著論文を作成し、査読付き報告集Proceedings of MCQMC2016での掲載が決定した。 さらに、検定パッケージに含まれる個々の検定について、奥富秀俊氏・中村勝洋氏の提唱した三重検定を利用し、検定統計量の計算誤差や近似精度が適切であるかを実験的に判断する手法の確立に取り組んだ。これは第2段階の検定として計算誤差を含まないものを選択し、サンプルサイズを向上させつつ全体の近似誤差の累積を二重検定程度に抑えることで、p値の経験分布と理論的な分布の乖離をより精密に測る方法である。本年度は、NISTの最新版パッケージに含まれる13種の検定の再検証に加えて、TestU01に含まれる検定群Crushに対する健全性評価を行い、モンテカルロ法・準モンテカルロ法に関する国際研究集会MCM2017にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NISTの二重検定に対して、平成28年度までの成果に加えて連検定に関しても適切なサンプルサイズの上界を与えることが可能となった。また、実験的にはよく知られている、第2段階のサンプルサイズが極端に大きいとどんな擬似乱数でも棄却してしまう現象について、カイ二乗食い違い量からの説明を与えることができた。 さらに、これまでは本格的な調査が行われていなかったTestU01に含まれる個々の検定の信頼性について、いくつかの理論上・実装上の誤りを具体的に指摘し、適切な改善を提案することができた。さらに離散フーリエ変換検定についても様々なパラメータが異なる視点から提唱されている状況に対して、統一的に比較する実験結果を提示した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、三重検定を用いた統計的検定を用いて、TestU01 Crushに含まれる全ての検定法の検定を行う。特に誕生日間隔検定など、離散型確率分布に従う統計量を持つ検定に対する評価法を調査し、サンプルサイズとp値の計算精度の関係を明らかにする。NIST検定パッケージについても、現在未調査のRandom Excursion検定およびRandom Excursion Variant検定に対する信頼性評価を行う予定である。これらの成果は7月に開催される国際研究集会MCQMC2018にて口頭発表をする予定である。加えて、統計的検定プログラム開発用に、三重検定プログラムを開発者ツールとして作成し、ウェブ上に公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた計算機よりも高性能なものが予定額よりも安価に購入できたこと、予定していた出張をいくつか取りやめたことにより差額が生じた。一方で計画時には未定だったいくつかの国際研究集会の日程が確定したため、差額を旅費などに充当する予定である。
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