研究課題/領域番号 |
17K14234
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原本 博史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40511324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 擬似乱数 / 統計的検定 |
研究実績の概要 |
2019年度は、広島大学の松本眞教授と斎藤睦夫研究員とともに、JavaScriptの標準擬似乱数であるxorshift128+に関して、3次元単位立方体内のランダムプロットから乱数性を損なう規則的な構造を発見した。 xorshift128+は出力の線形関係をなくすため、ビットごとの排他的論理和ではなく算術的和を利用している。我々はこの二つの演算の類似点に注目することで、連続する3つの出力が満たす1次関係式を具体的に求めることができた。xorshift128+は擬似乱数生成法に関する統計的検定で著名な検定ツールTestU01のBigCrushに合格することが利点とされてきたが、この1次関係式の発見によりBigCrushには含まれていないが極めて自然な統計的検定でxorshift128+を棄却できることや、簡単なモンテカルロシミュレーションにも利用できない問題を抱えていることを示すことができた。 このように欠陥がある擬似乱数生成法が標準化されてしまう原因の一つとして、検定ツールTestU01が未だに32ビット乱数列のみを対象としていることが挙げられる。そこで64ビット出力の擬似乱数生成法に適用できるよう、開発者のモントリオール大学のピエール・レキエ教授とともに改訂を開始した。特に2019年度は64ビット化にあたって追加予定のNIST SP800-22に含まれる検定に対して、多重検定を利用した検定の信頼性評価を応用して問題点の発見と修正作業を行い、必要な修正を施すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TestU01の修正作業に関しては、計算機実験に必要な時間が想定を超えていたため、本来すすめる予定だったCrushやBigCrushの検証・修正作業を実施できなかった。また、xorshift128+の解析結果に関しては、3つの連続する出力の1次関係式が決定できたという進展があったものの、口頭発表を行う予定だった応用数理学会(2020年3月開催予定だったのもの)が中止になったため、研究成果の公表が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はモントリオール大学との共同研究を進め、年内にプログラムコードを完成させて論文を作成する予定である。特に現在開発中のプログラムコードに関して、統計数理研究所のスーパーコンピュータを利用して多重検定を行うことで、妥当性を検証する部分を担当する。また、xorshift128+に代わる軽量擬似乱数生成法の候補として、TinyMT127の改良に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会や出張がコロナウイルスの影響で中止になり、旅費に繰越が生じることとなった。一方で数式処理システムの更新が必要となったため、これらの繰越金を利用して研究環境を再度整備する予定である。
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