研究課題/領域番号 |
17K14234
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原本 博史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40511324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 擬似乱数 / 統計的検定 / NIST SP800-22 / xorshift128+ |
研究実績の概要 |
2020年度は、米国国立標準技術研究所による擬似乱数の統計的検定パッケージであるNIST SP800-22について、二重検定時の第2段階におけるp値の計算誤差とサンプルサイズの関係を研究した。特に、(1)現在利用可能な15種類の検定のうち9種類について、第1段階のp値が近似的に計算される際の第2段階のサンプルサイズの上限を、カイ二乗ディスクレパンシーによって正確に見積った。これにより、これまで一律に有意水準の逆数程度とされていた第2段階のサンプルサイズは、検定および第1段階のサンプルサイズによって大きく異なることが明らかになった。また、(2)モンテカルロ法を用いて第1段階のp値の分布を高精度で計算することにより、第2段階の帰無仮説をより正確に記述することで、サンプルサイズに関する制約を取り除くことを示した。以上の結果を論文として出版した。 また、昨年度の研究を継続し、近年多くのブラウザなどで標準採用されている擬似乱数xorshift128+の3次元出力が、いくつかの平面に集中するという偏りを、3つの数の排他的論理和と算術的和の類似性に注目することで、より精密に記述した(現在、論文投稿中)。また、類似の考え方をxorshift128+の発展型の一つであるxoroshiro128+に適用し適当な変換を施すことによって、擬似乱数の包括的統計評価手法の一つTestU01によって棄却できることを示した。これは現在広く使われている高性能擬似乱数ではみられない偏りであり、今後の理論的な評価に向けた手がかりとなる結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来ならばTestU01の64ビット化に関する実装・研究のための出張や、xorshift128+の3次元的偏りの研究成果の報告を行う予定であった。これらの海外出張はコロナ禍において不可能となり進展させることが不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に実施できなかったTestU01の64ビット化に関する研究を進める予定である。また、既存のTestU01では多数のp値をどう解釈するかという困難さに対して、検定間の類似性・相違性を数値化することで必要な検定を抽出し、一つの数値指標として出力するような明確な基準の開発に向けて数値実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張2件が新型コロナウイルスによって不可能となったため、繰越が必要となった。2021年度は一部研究計画を変更し、TestU01のp値を利用して検定間の相互関係を研究することにしている。この際、大量の計算が必要となるため旅費を転用し高性能計算機を購入して効率的に実験を進める予定である。
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