研究課題
本研究課題は力学系における時間のマルチスケール性や解の有限時間爆発などの「特異性」を発現する系に対し、精度保証付き数値計算及びその基礎をなす包括的数学理論を確立することを目指すものである。最終年度ではfast-slow系における弛緩振動、混合モード振動などに典型的にみられる「非法双曲型不変多様体」を伴う解の構成を、位相的アプローチによる精度保証付き数値計算を意識した方法として議論し、一方で法双曲型不変多様体に沿って爆発する解の特徴づけなどを行った。他にも有限時間爆発を含む「有限時間特異性」のカテゴリで、爆発解の漸近挙動を決める「爆発レート」の低次項を含めた展開、複素関数の極などの特異点とみなした時の爆発時刻の特徴づけなど、漸近解析、複素関数、特異点論を意識した議論を進めている。しかしいずれも異なる側面を持つ、かつ着地点を決めるのが非常に難しい問題であり、現在は有志との知識共有にとどまっている。上で述べた非法双曲型不変多様体は力学系における不変集合の「分岐」を伴う構造に由来する事が少なくなく、具体的な系におけるその検証は分岐図式のシステマティックな構成によってなされる。精度保証付き数値計算を交えた議論では、分岐図式そのものを構成する議論は多くなされてきているが、図式を構成する不変集合周りの力学系的性質(解の漸近挙動)がわかる分岐図式を描く議論が思いの外少ない。Fast-slow系などのマルチスケール構造を伴う系では不変集合近くの力学系の振る舞いを知る事で解が初めて記述できるため、精度保証付き数値計算においてもこの特性を担保する計算法の構築が求められる。今年度はサドル・ノード分岐に限り、分岐点やその近傍の平衡点における力学系の情報を持った構造の精度保証付き数値計算法を提唱、現在取りまとめている。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Computational and Applied Mathematics
巻: 374 ページ: 112607~112607
10.1016/j.cam.2019.112607
『数学』(日本数学会編集)
巻: 71 ページ: 252--281
Journal of Differential Equations
巻: 267 ページ: 7313--7368
doi=https://doi.org/10.1016/j.jde.2019.07.022
https://researchmap.jp/7000003451/