研究課題/領域番号 |
17K14236
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
籾原 幸二 熊本大学, 教育学部, 准教授 (70613305)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 強正則グラフ / 差集合 / 歪アダマール差集合 / アダマール行列 / 差集合族 / アソシエーションスキーム / ガウス周期 |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は, 有限幾何と円分類を用いて解釈できる, 有限体上の歪アダマール差集合・強正則グラフを, 計算機を用いて数多く発見することであった. また, 得られたグラフの全自己同型群の理論的計算法について明らかにすることであった. 本年度の研究では, まず位数7の6乗の有限体上で, 新たな強正則ケーリーグラフの例を計算機を用いて発見した. また, それがBamberg氏, Lee氏, Xiang氏との先行共同研究において発見したhemisystemと呼ばれる3次元Hermitian曲面上の幾何構造から得られる強正則グラフの, ある種の変形として得られることを見出し, 3値のガウス周期の特徴づけを用いて無限系列へ一般化することに成功した. この論文は, 単著として, 既に国際学術誌European Journal of Combinatoricsに出版された. また, 有限体上の射影空間の超平面のよい分解から強正則グラフを構成する一般的な手法を考案し, 実際に新たなパラメータをもつ強正則グラフの例を発見することに成功した. 例えば, 頂点数7の9乗の強正則グラフで, 計算機によっては発見が困難なものなどがある. この結果は, Xiang 氏と共同論文としてFinite Fields and Their Applicationsという国際学術誌に投稿・出版された. その他, アダマール行列についての研究で, 差集合族の新たな構成法を提案することで, 新たな歪アダマール行列の無限系列を得ることに成功した. この結果は, G. Szekeres (1971)によって未解決のまま残されてきたアダマール行列に関するある存在問題を解決する有益な結果である. この結果を基に現在論文を執筆し, 国際学術誌へ投稿中である. また, 国内外の6つの研究集会・国際会議で講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的は, 有限幾何と円分類を用いて解釈できる, 有限体上の歪アダマール差集合・強正則グラフを計算機を用いて数多く発見することであった. この目標については, 計画通り, 計算機を用いて強正則グラフや歪アダマール行列を生成する新たな差集合族の発見を行うことができた. また, 部分的ではあるが, それらの結果を既に一般化を行うことに成功し, 強正則グラフやアダマール行列の新たな無限系列を得ることができた. 強正則グラフにおいては, 3値をとるガウス周期には, 一般的に, 3クラスのアソシエーションスキームが対応することが知られていたが(Feng-Momihara-Xiang, 2016), 特別な場合には強正則グラフを与えることが解明された興味深い結果であると思われる. また, アダマール行列の存在については, これまで難しいとされてきた高い指数のcyclotomyの交差素を再帰的な手法で計算することに成功し, 1971年以来の新たな歪アダマール差集合族の無限系列を発見することができた. そのような観点から, 研究は順調に進展しているといえる. 特に, 今年度, これら研究結果で2本の論文(査読有)が国際学術誌に出版され, さらに加えて, 1本の論文を投稿することができたという点も強調したい. 一方, 今回の研究成果に包含されない多数の歪アダマール差集合・対称アダマール差集合族・強正則グラフの例が計算機を用いて構成できているという点を考慮に入れ, 今後それらの更なる一般化を考えることができる可能性があり, 今後の進展が期待される. また, 得られた強正則グラフの全自己同型群の計算手法に関しては, 計算機によっておおよその予想はついているものの, 理論的な証明までは至ることができなかった. 引き続き, 次年度も研究を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は, 新しい強正則グラフおよび歪アダマール型の差集合族の例の発見を行い, それらの部分的な一般化を行うことで, 概ね計画通りに研究が進んだ. 本年度一般化を行った例以外にもいくつかの有限体上の強正則グラフおよび対称的なアダマール差集合族の例が発見されており, そのいくつかの例のパラメータが列を作っているものがあるため, 次年度はまず初めに, それらの一般化および背後にある幾何学的構造について特徴付けを行う. また, 本年度, 理論的な証明に至らなかった得られた強正則グラフの全自己同型群の計算法について継続して研究を行う. 次に, 当初の研究計画の通り, 平方剰余型差集合とは非同型な歪アダマール差集合の例の更なる発見・一般化を行う. また, 理論的に非同型性を証明するための新たな手法の提案を行う. さらにこれまで得られた研究手法をアソシエーションスキームへ拡張し, 新たなものの発見を行う. しかし, 計算機による探索範囲が広くなることが予想され, 例の発見が計画通り進まないこともありうる. そこで, まず, 以下の方法で研究対象のアソシエーションスキームのクラスを制限し研究を推進する. Bamberg, Kelly, Law, Penttila (2007)は, ある条件下でm-ovoidが強正則グラフを与えることを示したが, その条件を排除し, 一般化を行うことで, アソシエーションスキームが得られるかという問題に取り組む. その他, Polhill (2010)がPaley型差集合の存在を証明する際に用いた手法と, 本研究課題で用いている有限幾何学的手法を組み合わせることで, アソシエーションスキームを構成する手法の提案を試みる.
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