研究実績の概要 |
本年度の研究目的は, 有限体上の差集合・強正則グラフ・Greismer符号の構成法を新たに開発することであった. これまで, 歪アダマール差集合の存在性は, 基本可換群上しか存在しえないと予想されてきた. 一方, 小さな群上の歪アダマール差集合の存在性を仮定し, それらを合成し, 大きな群上でも存在性を保証する再帰的構成法を考案した. これにより, 非基本可換群上の歪アダマール差集合が存在すれば無限個存在していることを示すことができた. この結果は, 単著論文として, 国際学術誌に投稿中である. また, 国内研究集会にて, 2019年11月に口頭発表を行った. 2018年に, 3つの値をとるガウス周期を基礎に強正則グラフの新たな構成法を提案した. しかし, その条件が適用可能なパラメータを特定することは未解決であった. 2019年度は, ガウス周期が3つの値を取る場合を特徴づけた. また, 構成法が適用可能な位数の条件を冪乗剰余で記述し, 解析的整数論を用いて条件を満たす位数の無限存在性を示すとともに, その密度も決定することに成功した. この結果は, Xiang氏と共著で国際学術誌へ論文を執筆中である. また, 国内研究集会にて, 2019年6月に口頭発表を行い, その報告集が出版された. また, 2019年8月に国際研究集会にて, 招待講演を行った. また, Griesmer符号に関しては, tight setと呼ばれる幾何構造の分解から超平面交差数が計算可能な有限体の多重部分集合を構成することに成功し, 新たな3または4種の重み分布を持つ符号を構成できた. しかし, これは漸近的にGreismer限界を満たすのみであったため, 今後も継続して構成法の改良が必要である. この研究成果についても, 既にtight setの論文として, 国際学術誌に投稿中である.
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