研究課題/領域番号 |
17K14237
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
出原 浩史 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50515096)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パターン形成 / 燃焼問題 / 計算機支援解析 / 数理モデル / 進行波解 / 不安定化 |
研究実績の概要 |
古くから燃焼現象に対する数理モデルの解析的研究はなされてきたが未だに未解明なことが多く、様々な数理的研究がなされている。本研究では、空気の流れや流入量をコントロールできる単純な実験系において、空気の供給速度や供給方向によって燃焼の挙動がまったく異なるという実験に対して、数理モデルを用いて、その違いを生み出す数理的構造を探索することである。特に、この実験系において、空気の流れに逆らって進む上流燃焼と空気の流れと同じ向きに進む下流燃焼の2つがあることが知られており、また、空気の流入量をコントロールすることによっても様々な燃焼パターンが生じることが報告されている。空気の供給速度がある程度早い時には燃焼面は不安定化せず、一様に燃焼が進むことが実験から報告されている。この一様な燃焼状態は他の燃焼パターンの基礎となるため、その解析は重要であると考えている。そこで1年目の研究計画として、一様な燃焼面に着目することで、空間2次元の問題は、空間1次元の数理モデルにおける進行波解を考察することに帰着されるため、空間1次元モデルの解析を行った。考察する数理モデルは3変数の反応拡散系のため、厳密に進行波解の存在を示すことは難しい。そのため、計算機を援用した手法によって数値的に進行波解の存在を示唆できた。さらにはその1次元進行波解、つまり空間2次元における平面進行波解のフロントが空気の流入量をコントロールすることで不安定化され、その結果として複雑な燃焼が生じることが数値シミュレーションによって示唆された。これまで上流燃焼においては研究をしてきたが、下流燃焼においても平面進行波解の不安定化が示唆されてことは大きな進歩であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の燃焼は2次元で観察される現象であるが、一様に燃焼する状態を考察するには空間1次元の数理モデルを考察すればよく、比較的扱いやすい問題となっている。そのため、計算機を援用した手法によって順調に解析を進めることができている。特に、上流燃焼と下流燃焼の一様な進行波解の存在を示唆でき、その一様進行波解が不安定化することによって複雑な燃焼が生じることが数値シミュレーションによって示唆された。さらに、新たな発見として、上流燃焼が生じたあとでも、全ての可燃物が消費される訳ではなく、ある程度の可燃物量が残されるため、状況によって再度燃焼が生じる再燃という現象があることが分かった。これは考えている燃焼が完全燃焼ではなく、酸素濃度の少ない状況下における不完全燃焼であるからだと考えられる。その再燃が生じる条件についても数理モデルの数値シミュレーション解析によってわかりつつある。以上の理由により、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、次年度は次のことを考えている。実験では、空気の供給速度を変化させると燃焼状態が変化し、燃焼跡パターンに大きな変遷が見られる。例えば、上流燃焼では、空気の供給速度が大きい時には一様な燃焼面が形成され伝播するが、空気の供給速度を遅くしていくと、ある速度で一様な燃焼面が不安定化し、波状の燃焼面が形成され伝播する。このような燃焼面の不安定化はどのように生じるのかを調べることが次の段階となる。そのため、数理モデルの空間2次元問題における上流燃焼と下流燃焼の燃焼パターンが大きく変化するパラメータ近くでの解の詳細な性質を調べ、その特徴付けを行う。下流燃焼については実験的にほとんどよく分かっていない状況であり、数理モデルの解析によって得られる結果から実験へとフィードバックできると考えられるので下流燃焼の解明に大きく前進する可能性がある。今後扱う問題は空間2次元の3変数反応拡散系であるが、これまでの空間1次元問題における進行波解をベースとして、計算機支援による解析や数値シミュレーション解析を主な手法として複雑な燃焼問題のメカニズム解明を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への出張を控えたため、繰越が生じた。次年度は研究打ち合わせのための旅費や研究成果発表のための旅費として利用する予定である。
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