研究実績の概要 |
以下の研究課題に従事した: (A1)高次元非正規母集団におけるプロフィール分析における平行性仮説および平坦性仮説の検定手法の提案. (A2)複数の高次元非正規母集団における平均ベクトルと分散共分散行列の同時検定. (A1)について, L2ノルムに基づく検定統計量を構成し, マルチンゲール中心極限定理そのを利用して, 帰無仮説の下での漸近分布,対立仮説の下での漸近分布を導出した. 漸近的な帰無分布を近似分布として用いた場合の精度評価をシミュレーションにより行った. 提案法は, 母集団分布に正規性が仮定できない場合についても良い精度を有していることを確かめた. さらに, 実際のデータへ提案法を適用した. これらの成果は, Journal of Multivariate Analysis へ掲載された. (A2)について, 平均ベクトルの同等性検定で用いられる検定統計量と分散共分散行列の同等性検定で用いられる検定統計量の和を取ることで, 検定統計量を作成した. さらに, 漸近論に基づく近似的な棄却点の導出も行うことで, 近似検定法式を与えた. また, 高次元データを想定したシミュレーションを行い, 提案近似検定方式の精度評価を行った. その結果, 分散共分散行列の固有値が極端にスパイクしないような場合は, 良い精度を有することを確認した. 母集団数が2である場合の結果は, TEST へ掲載が決定した. また,(A2)の成果を日本数学会で報告を行った.(A1)や (A2) に関連するテーマとして多変量生物学的同等性検定の研究も行った. その結果を, 計算機統計学会で報告した. 専修大学西山貴弘氏、ストックホルム王立工科大学タチアナ・パブレンコ氏の研究室を訪問し, 分散共分散行列の構造に関する検定について共同研究を開始した.
|
今後の研究の推進方策 |
(A2)については, 理論的な結果や数値的な結果が概ね揃ったので, 母集団数がkである結果を論文に纏め, 学術誌への掲載を目指す. また,(A1)や (A2) に関連する多変量生物学的同等性検定の研究成果を論文に纏め, 学術誌への掲載を目指す. 本年度は, (1) 分散共分散行列の構造に関する検定法および (2) 平均ベクトル間の差のL2ノルムの区間推定法の提案を目指す. テーマ (1) については, 専修大学西山貴弘氏、ストックホルム王立工科大学タチアナ・パブレンコ氏と共同で行う. テーマ (2) については, 東京理科大学理学部瀬尾隆氏と共同で行う. 分散共分散行列の構造にかんする仮説検定問題として, RV係数を利用したブロック対角行列の検定を提案する.
|