研究課題/領域番号 |
17K14239
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
野口 健太 東京電機大学, システムデザイン工学部, 助教 (50748613)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グラフ理論 / 閉曲面 / グラフ彩色 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、交付申請書に記載した「研究の目的」における予想1と予想2の部分的解決に時間を割いた。 予想1に関して、三角形分割のすべての頂点の次数が偶数であるという条件「偶三角形分割」を課して問題に取り組んだ。この条件下では予想1は正しいことが判明していたが、「局所平面的」という条件を緩めても、種数が小さい閉曲面(具体的には球面・射影平面・トーラス・クラインの壺)上では予想1が正しいことが判明した。この証明には偶三角形分割の局所変形が使われており、局所変形における不変量モノドロミー(本研究の鍵となる手法)は使われていない。また偶三角形分割という条件を課しても、上に挙げた四つ以外の閉曲面では予想1が成り立たない例を構成した。これにより予想1の「局所平面的」という条件の本質性がより浮き彫りになった。 予想2に関して、こちらも閉曲面を固定した結果ではあるが、射影平面およびトーラス上の任意の三角形分割Gに対して、二部的な全域四角形分割に“近い”構造を持つことを証明することができた。この“近さ”はGの辺幅と呼ばれる量に依存する式で書ける。現状ではGの辺幅が大きくなるほど“遠く”なってしまうため、予想における「任意の局所平面的三角形分割」が二部的な全域四角形分割を持つことを示すのは難しいが、辺幅の値に応じた構造を持つことを示すことができたのは大きな進展である。また異なる条件下でもいくつかの結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部分的な結果ではあるが具体的な成果が得られ、全体的に見ておおむね順調に進展していると言える。 予想1に関しては、種数が小さい閉曲面上の任意の偶三角形分割は Grunbaum coloring を持つことを示した論文が出版された。この結果は「生成定理」と呼ばれる手法を用いるものであり、直接的に任意の閉曲面上の局所平面的三角形分割に適用することはできないが、全体解決の糸口として機能する可能性がある。 予想2に関しては、1月に当該分野の研究者(予想2を提唱した論文の著者の一人)であるカリフォルニア州立大学サンマルコス校の Andre Kundgen氏が来日し,横浜国立大学の中本敦浩教授と小関健太准教授との共同研究を行い、一部研究が進展した。具体的には、射影平面上もしくはトーラス上の任意の局所平面的三角形分割は、辺幅という量に応じた“近さ”で、二部的な全域四角形分割に“近い”構造を持つことが判明した。この近さの関数を改善することにより、全体解決の糸口として機能する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の進展は「研究の目的」における(A)「不変量モノドロミーによる,フィスク三角形分割に対する予想1と2の解決」に特化していた。研究実施計画に記入した通り、(B)「5-染色的な局所平面的グラフの構造の決定」に関しては平成30年度から本腰を入れて研究を開始する予定であったため、今年度(A)で得られた知見を基に(B)の考察を進めたい。 こちらも完全解決はあくまで最終目標であり、足掛かりとなる部分的な結果を得ることから始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:参加を予定していたハンガリーで開催された研究集会に参加できず、外国旅費に充てた予算が余ってしまったため。 使用計画:平成30年度は、翌年度分と次年度使用額を合わせると(充足率がかけられる前の)申請時の額と概ね一致するため、当初の計画に沿って予算を使用する予定である。
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