• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

高解像度・高感度サブミリ波観測で探る惑星形成領域の詳細構造

研究課題

研究課題/領域番号 17K14244
研究機関茨城大学

研究代表者

塚越 崇  茨城大学, 理学部, 助教 (20533566)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード電波天文学 / 惑星系形成 / 原始惑星系円盤
研究実績の概要

ダスト連続波の高分解能観測では、これまでにない感度かつ2天文単位(au)という高解像度の画像が取得できており、以前の観測で見出されていた、複数のギャップ構造(22,37au)をより鮮明に捉えることに成功した。スペクトル指数の解析を行ったところ、内側22auにあるギャップ位置においてスペクトル指数の変化を確認することができ、以前の結果を裏付ける結果を得ることができた。また、以前の結果では見えなかった、外側37auにあるギャップ位置におけるスペクトル指数も見積もれた。内側のギャップ同様、外側のギャップ位置でもスペクトル指数が増大している様子が見えつつあり、外側ギャップも惑星により形成された可能性を示唆している。
さらに、ALMAによる極めて高感度の観測によって、原始惑星系円盤内に局所的なミリ波放射の増大を発見することができた。これは、形成中の惑星を取りまく周惑星円盤に関連した構造だと思われ、そのような構造を見出した初めての例となる。惑星系形成の研究にとっても極めて重要な成果であることから、この結果の早急な論文化を進めている。
円盤ガス成分の高分解能観測では、以前の成果では明瞭でなかった、ダストギャップ構造近傍におけるガス分布の変化を明らかにした。一方で、ダストギャップの位置とガスギャップの位置は一致しておらず、ガスとダスト分布が独立かつ複雑な構造を持つことを示唆している。化学反応計算を用いた解析を行ったところ、観測で得られたガス放射の強度分布は、特にガスギャップを必要とせず、いくつかの分子の化学反応によっても解釈可能であることが分かった。この結果についても別途論文化を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ダスト連続波に対する高分解能観測では、予定されていたALMAによる撮像観測が滞りなく実行された。データは全て解析済みであり、当初の予定通り、2auという高い解像度による画像の作成に成功し、以前の結果を裏付けつつ、外側37auにあるギャップに対する新しい知見を得ることができている。また、ALMAの高い感度による観測によって、当初想定されていなかった、原始惑星系円盤内における局所的なミリ波放射の検出に至っている。この構造は、形成中の惑星を取りまく周惑星円盤と呼ばれる構造に関連していると考えられ、その発見の科学的意義は極めて大きい。その論文は間も無く投稿予定である。
円盤ガス成分に対する観測も実行済であり、画像作成も一通り終了しており、物理量導出のような基本的な計算もほぼ終了している。こちらも早急な論文化を進めているが、類似した観測の論文が出版されていることもあり、より複雑なモデル計算をベースにした論文化を進めている。
H29年度実行予定だった電波偏光観測は、部分的にしか実行されなかったため、H30年度のALMA観測フェーズ(サイクル6)へ再度観測提案を行った。

今後の研究の推進方策

概ね予定通り、これまでの観測結果をベースにした円盤構造のモデル化と、放射輸送計算を用いた円盤構造の包括的理解を目指す。円盤ダストおよびガス成分に対する解析は終了しているため、上述の論文化を進めつつモデル構築を行う。新たに見出された局所的なミリ波放射成分については、その科学的重要度から、本研究課題内で追加観測を推進することとする。その放射起源を突き止めるため、より高い分解能を用いた観測をALMAへ提案済である。将来的には周惑星系円盤の検出に重要となりうる赤外線観測も見込んでいる。
電波偏光観測は部分的にしか行われなかったため、次観測フェーズへの再観測提案を行っており、その合否を待っている状況である。一方、部分的に行われたデータは間も無く使用可能となる見込みであり、その一部データの解析は進めておく。
疎性モデリングによる干渉計画像作成法については、ALMAの解析ソフトであるCASAへの組み込みが進められており、間も無く公開予定である。その一方で、別観測分野で疎性モデリングの応用を行っているグループと適宜ミーティングを行い、スムースに原始惑星系円盤への応用が行えるよう準備をしておく。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度での任期切れに伴い、次所属機関への転職活動を行っていたが、それが年度末まで続いた関係で
年度末にかけて行う予定だった出張計画を変更することになった(およそ関東圏内の出張2回分)。
所属機関の異動に伴い研究環境が変わったため、発生した次年度使用額については、異動に伴い新たに必要となった図書や消耗品等に充てる。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (4件)

  • [国際共同研究] リーズ大学/クイーンズ大学ベルファスト(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      リーズ大学/クイーンズ大学ベルファスト
  • [国際共同研究] シュチェチン大学(ポーランド)

    • 国名
      ポーランド
    • 外国機関名
      シュチェチン大学
  • [国際共同研究] ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ハーバード・スミソニアン天体物理学センター
  • [雑誌論文] The Evidence of Radio Polarization Induced by the Radiative Grain Alignment and Self-scattering of Dust Grains in a Protoplanetary Disk2017

    • 著者名/発表者名
      Kataoka Akimasa、Tsukagoshi Takashi、Pohl Adriana、Muto Takayuki、Nagai Hiroshi、Stephens Ian W.、Tomisaka Kohji、Momose Munetake
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 844 ページ: L5~L5

    • DOI

      10.3847/2041-8213/aa7e33

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Detailed modeling of dust distribution in the disk of HD?1425272017

    • 著者名/発表者名
      Soon Kang-Lou、Hanawa Tomoyuki、Muto Takayuki、Tsukagoshi Takashi、Momose Munetake
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 69 ページ: id.34~id.34

    • DOI

      10.1093/pasj/psx007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Detection of Submillimeter-wave [C i] Emission in Gaseous Debris Disks of 49 Ceti andβPictoris2017

    • 著者名/発表者名
      Higuchi Aya E.、Sato Aki、Tsukagoshi Takashi、Sakai Nami、Iwasaki Kazunari、Momose Munetake、Kobayashi Hiroshi、Ishihara Daisuke、Watanabe Sakae、Kaneda Hidehiro、Yamamoto Satoshi
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 839 ページ: L14~L14

    • DOI

      10.3847/2041-8213/aa67f4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] アルマ望遠鏡によるうみへび座TW星のサブミリ波多波長観測2017

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 雑誌名

      天文月報

      巻: 110 ページ: 256~261

  • [学会発表] ALMA観測結果レビュー2018

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 学会等名
      ALMA原始惑星系円盤ワークショップ
  • [学会発表] 原始惑星系円盤分野でのALMA観測の実例紹介2017

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 学会等名
      ALMA太陽系ワークショップ
  • [学会発表] Submillimeter Multi-Wavelength Observations for the Protoplanetary Disk around TW Hya with ALMA2017

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
  • [学会発表] ALMAによる原始惑星系円盤観測2017

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 学会等名
      京都大学基研研究会「原始惑星系円盤」
    • 招待講演
  • [学会発表] ALMAによる原始惑星系円盤の[CI](3P1-3P0)輝線サーベイ観測2017

    • 著者名/発表者名
      塚越崇
    • 学会等名
      日本天文学会2017年秋季年会
  • [備考] 理学部・塚越 崇 助教ら、うみへび座TW星周囲の円盤の様子を詳しく捉えることに成功

    • URL

      http://www.ibaraki.ac.jp/news/2016/09/140944.html

  • [備考] 巨大氷惑星の形成現場を捉えた~アルマ望遠鏡で見つけた海王星サイズの惑星形成の証拠~

    • URL

      https://www.nao.ac.jp/news/science/2016/20160914-alma.html

  • [備考] 理学部の百瀬宗武教授、塚越崇助教らの共著論文が2017年度日本天文学会・欧文研究報告論文賞を受賞

    • URL

      https://www.nao.ac.jp/news/science/2016/20160914-alma.html

  • [備考] アルマ望遠鏡で175光年先の星を観る; 惑星形成のメカニズム解明を目指して

    • URL

      https://academist-cf.com/journal/?p=2503

URL: 

公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi