研究課題
本年度は、ホットジュピターWASP 33bのdayside高分散分光の解析を行い、酸化チタンの初検出に成功した。さらに温度逆転構造も同時に発見した。この解析に用いたデータはすばる望遠鏡のHDSによるものであり、高分散分光キャラクタリゼーションとしても可視光領域を用いたという意味で初の検出例である。同時期にVLT中分散分光でも酸化チタンが発見されたが、両惑星とも比較的高温の部類のものであり、酸化チタンがコールドトラップされない温度領域でこそ存在し、検出されることを示唆している。また本手法を、近赤外光でも可能にするためIRDを用いたパイプラインも作成した。これは直接撮像惑星での同様な手法(HDC)を可能にするために我々が開発しているSCExAO+IRDの接続部分(Post-Coronagraphic Injection)が使用可能にばれば世界に先駆けてHDCを行うことができることを意味する。さらにケプラー衛星・TESS衛星等の長期間のライトカーブモニタリングデータから長周期トランジット惑星の検出を行うスキームの開発を行った。ケプラーデータ中に4つの新しい自己重力レンズ連星(SLB)を発見し、スキームの有効性を確かめることができた。ちなみに現在発見されているSLBは5つであり、そのうち4つは我々が発見したものである。これらのSLBの特徴は、Field Blue Straggler(FBS)と同様な周期・白色矮星質量を持つことがわかった。すなわち、安定質量膠着シナリオから予想されるものと非常に良い一致を示す。これは、FBSとSLBは同じ起源をもち、銀河内に普遍的に存在する種族であることが示唆される。SLBは0.1%以下の増光であるが、これが減光であれば海王星以下の惑星に対応する。その意味で2018年度に打ち上げ予定のTESSデータに即時に適応できる。
1: 当初の計画以上に進展している
実際にすばる望遠鏡で酸化チタンの初検出をおこなうことができた。これは系外惑星キャラクタリゼーションの将来的な展望として有望であるため。
次年度はTESS衛星のデータが使用可能になること(a)と、IRDの使用が可能になる(b)点から、本年度に達成した課題をさらに進めることが可能になるだろう。(a)ではケプラーデータより10倍以上のライトカーブが解析可能になるため(フルフレーム)これをもちいて、近傍の惑星探査を行うことができる。GPU解析サーバ等の準備が整ったことより、TESSのより大きなデータであっても解析がかのうになった。そのため、次年度以降、これまで作成しケプラーデータで試したコードをTESSデータに適用していく。(b)はこれまですばる望遠鏡では可視領域でしか実行できなかった、言い換えると、可視領域まで輻射光が卓越しているような高温惑星にしか適用できなかった高分散キャラクタリゼーションを、より広い領域、異なる分子での探索が可能になる。現在すばる望遠鏡に複数の観測提案をおこなっているが、ひきつづき提案を行いデータを解析していくことで、新たな検出例が期待できる。また同時にHDCの装置開発を行っていくことで、直接撮像での高分散キャラクタリゼーションにチャレンジしていく予定である。
GPU値段高騰により、買い控えた。次年度は価格が安定する見込みであるのでこれを購入する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
the Astronomical Journal
巻: 155 ページ: 144
10.3847/1538-3881/aaaaaf
巻: 155 ページ: 206
https://doi.org/10.3847/1538-3881/aab9a1
巻: 154 ページ: 221
10.3847/1538-3881/aa9433
Publication of the Astronomical Society of Japan
巻: 69 ページ: 88
10.1093/pasj/psx095