研究課題/領域番号 |
17K14248
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樫山 和己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10785744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中性子星 / 超新星爆発 / 電波 / ガンマ線 |
研究実績の概要 |
平成30年度中の研究成果で本研究課題と関連する主なものは以下の2つである。
まず、Conor Omand氏、村瀬孔大氏と共同で、中性子星パルサーからのパルサー星雲放射の影響下にある超新星残骸におけるダスト形成の理論モデルを構築し、中性子星パルサーの物理パラメータに依存して形成されるダストの性質や、ダストによるパルサー星雲放射の吸収、再放射がどのように変化するかを系統的に調べた。その結果に基づき、誕生後100年以内の高速回転中性子星探査へ向け、新たにJWST等を用いたフォローアップ観測を提案した。
また、茂山俊和氏と共同で、誕生後数10秒の中性子星へのフォールバック質量降着の研究に取り組んだ。特に、生まれたての中性子星からの星風とフォールバック降着流の競合に着目、そのような系を記述するオイラー方程式の一次元球対称自己相似解を新たに構成し、中性子星のパラメータごとに星風が支えられる限界のフォールバック降着率が存在することを示した。この結果に基づき、パルサーやマグネター、central compact objectといった異なる中性子星の系列が中性子星風とフォールバック降着の競合の結果自然に発生し得ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度から継続して理論、観測の両面で研究が順調に進展している。
平成30年度は中性子星パルサーからのパルサー星雲放射の影響下にある超新星残骸におけるダスト形成、および誕生後数10秒の中性子星へのフォールバック質量降着に関する理論研究をまとめた論文が出版された。後者に関しては出版論文で新たに発見したフォールバック降着流の1次元自己相似解を拡張した2次元自己相似解の構成、多次元流体シミュレーションによる解の検証、といった発展系の研究が現在進行中である。
一方で、平成29年度に行った研究(Omand et al. 2018)に基づき、超高輝度超新星残骸に潜む高速回転中性子星からのパルサー星雲放射を検出するためにVLA, ALMA, NOEMAなどの電波、サブミリ波望遠鏡に提案した観測が採択され、実際に観測が行われた 。現在取得したデータについてはそれぞれ解析の最終段階であり、平成31年度中に結果をまとめた論文を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まずVLA, ALMA, NOEMAを用いて取得した超高輝度超新星残骸からの電波、サブミリ波データの解析を完了し、結果をまとめて論文として出版する。また、それとは独立に、観測結果の理論的解釈にフォーカスした研究を進める。特に、超高輝度超新星および高速電波バーストの中心エンジンとして生まれたての高速回転中性子星を考える、いわゆるマグネターモデルについて今回の一連の観測によってどのような制限が得られたかを系統的に調べ、その結果をまとめた論文を出版する。一方で、当初の研究計画に基づき、より一般の若いパルサー星雲に適用可能な輻射輸送計算コードの作成も継続して進める。
また平成30年度にスタートさせた、誕生後数10秒の中性子星へのフォールバック質量降着の研究を発展させ、生まれたての中性子星からの星風とフォールバック降着流の競合を多次元流体シミュレーションを用いて調べ、その結果を1次元自己相似解と比較、中性子星系列の分岐とフォールバック質量降着の関係をより踏み込んで調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は~15,000円であり、総額に対して~1%程度であり、無理に微調整して使い切るより次年度に回すことにした。研究課題と関連の深い教科書の購入やハードディスク購入の頭金として使用する予定である。
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