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2017 年度 実施状況報告書

星周ダスト放射をプローブとしたIa型超新星の起源解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K14253
研究機関広島大学

研究代表者

山中 雅之  広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (50645512)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード超新星爆発 / Ia型超新星 / 親星 / 赤外放射 / 星周物質 / 降着説 / 光学赤外観測 / 中小口径望遠鏡
研究実績の概要

宇宙における距離指標として扱える天体は限られている。Ia型超新星はその一つであり、絶対光度が明るく光度変化と絶対光度に強い相関関係を持つ。この性質を用いて、宇宙遠方の銀河の距離を測定する標準光源としての役割を担ってきた。それにも関わらずその爆発前の形態は依然として明らかになっておらず、その正体の究明が待たれている。理論的には、連星系において通常の恒星からの降着によって白色矮星が爆発に至る"降着説"と白色矮星同士が長い時間をかけて合体・爆発に至る"合体説"が提唱されている。"降着説"では星周物質の存在が期待される一方、"合体説"においては拡散によりほとんど周囲に物質は残らない。私は、ある特異な超新星について星周物質起源の赤外再放射を捉えたが、このような手法は未だ発展途上にあり、多くのIa型超新星に適用されるべきである。
本研究計画においては、Ia型超新星の長期の可視近赤外線観測を実施し、星周物質の質量に制限を与え、爆発する星の正体に迫ることを目的としている。初年度として、私は広島大学かなた望遠鏡を用いて、明るいIa型超新星の可視・近赤外線のモニター観測を実施した。得られたデータを光度曲線およびスペクトルとして解析した。また、これらのデータに基づき、各々の天体の性質を詳細に調べている。今後、これらのデータに基づき赤外放射から星周物質の質量に制限を与える解析を進める予定である。
また、一方で理論的な側面から研究に進捗があった。超新星からの放射が星周物質でどのように吸収再放射を行うか、特に幾何構造に焦点を当て理論的な知見を得た。それによれば少なくとも星周物質は非球対称的な分布を示し、特に双極状の構造を持てば観測データを説明しうることがわかった。私は、観測データに基づく知見を示し研究に貢献した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

赤外放射に観測的な制限を与えるために、長期の可視・近赤外線観測の実施が必要となるが、広島大学1.5mかなた望遠鏡による柔軟的・機動的な観測によって順調にデータを得つつある。特に、今年度は比較的近傍銀河でのIa型超新星の発見が多く、当初目標の15天体のサンプルのうち、すでに8天体についてデータを取得することができた。また、システマティックなデータ解析を実現するため、パイプラインの構築も実施した。これらを通じて、光度曲線データおよびスペクトルをほとんど現在進行の形でチェックしている。また、これらのデータに基づいた観測的性質の研究も進めている。すなわち、従来の良く確立された分類スキームに従って、サブクラスへの分類を進めエジェクタの物理量を推定するに重要な観測量を見積もっている。
また、理論的研究において発展があった。超新星放射に基づく星周物質の吸収再放射の理論計算とこれまですでに出版されているデータとの比較検討を行った。その結果、星周物質は非球対称的な幾何構造を持つことがわかった。この研究においては、偏光度・偏光方位角の時間発展の予言も示唆されており、偏光観測機能を持つ観測装置が運用されているかなた望遠鏡の将来的な観測でこれを捉えることができるのではないかという新たな見通しを持つことができた。

今後の研究の推進方策

これまでに取得したIa型超新星のサンプルについて、星雲期観測を実施する。超新星は時間とともに膨張し、十分時間が経過したのちに大気全体が光学的に薄くなる。この時、分光観測を実施すれば輝線放射が見られる。"降着説"に基づけば、超新星爆発時に伴星が持つ水素の外層を剥ぎ取り、エジェクタに取り込むことが期待される。いくつかの理論的研究に基づけば、星雲期において、膨張速度の大きいエジェクタ成分とは異なる、速度の遅い成分が表出するのではないかと予言されている。我々は、これらの理論的研究に基づき、星雲期スペクトルを用いて星周物質に制限を与えることを目指す。
星雲期スペクトルは、超新星が十分に暗くなった1年後に取得できるので、8メートルの大口径であるハワイ観測所すばる望遠鏡を用いる。すばる望遠鏡での観測については、すでに提案書を提出しているが、初期および後期で一貫したデータを取得するため今後も提案を続ける。
また、初期についてもかなた望遠鏡を用いて引き続き可視近赤外線データの取得を継続する。これまで取得されている初期観測データを用いてより詳細な比較検討を行い、超新星の観測的性質・エジェクタの物理量の推定を行う。
得られたエジェクタの物理量および星周物質の質量の関係性を構築する。このような系統的な研究は依然として実施例がほとんどなく、新たな描像を提示できる可能性がある。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 光赤外線大学間連携による超新星の追観測:  極超新星におけるヘリウムの発見2018

    • 著者名/発表者名
      山中雅之
    • 雑誌名

      天文月報

      巻: 111 ページ: 172-179

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 光赤外線大学間連携による IIP 型超新星 SN 2017eaw の追観測2018

    • 著者名/発表者名
      山中雅之, 中岡竜也, 川端美穂, 河原直貴, 長木舞子, 安部太晴, 川端弘治 (広島大学), 諸隈智貴 (東京 大学), 伊藤亮介, 村田勝寛 (東京工業大学), 今井正尭, 高木聖子 (北海道大学), 高橋隼, 本田敏志, 大島 誠人, Stefan Baar, 高山正輝, 斎藤智樹 (兵庫県立大学), 森鼻久美子 (名古屋大学), 斉藤嘉彦 (情報通 信研究機構), 他
    • 学会等名
      日本天文学会2018年春季年会
  • [学会発表] 極めて短いプラトーを持つ特異な超新星 SN 2017czd の測光分光観測2018

    • 著者名/発表者名
      中岡竜也, 川端弘治, 山中雅之, 川端美穂, 河原直貴 (広島大), 前田啓一 (京都大), 田中雅臣, 守屋尭 (国 立天文台), 冨永望 (甲南大)、かなた観測チーム
    • 学会等名
      日本天文学会2018年春季年会
  • [学会発表] 河原直貴, 山中雅之, 川端弘治, 中岡竜也, 川端美穂 (広島大)、前田啓一 (京都大), かなた望遠鏡チーム2018

    • 著者名/発表者名
      Ca-rich トランジェント iPTF15eqv の可視近赤外測光分光観測
    • 学会等名
      日本天文学会2018年春季年会
  • [学会発表] 減光速度の大きな極超新星 SN 2014as の測光分光観測2018

    • 著者名/発表者名
      大坪一輝, 山中雅之, 川端弘治, 高木勝俊, 中岡竜也, 川端美穂, 河原直貴 (広島大学), 前田啓一 (京都 大学)
    • 学会等名
      日本天文学会2018年春季年会
  • [学会発表] OISTER Follow-up Observations of the bright Type IIP supernova SN 2017eaw2018

    • 著者名/発表者名
      Yamanaka, Masayuki; Nakaoka, Tatsuya; Kawabata, Miho; Kawahara, Naoki; Chogi, Maiko; Abe, Taisei; Kawabata, Koji; Morokuma, Tomoki; et al.
    • 学会等名
      American Astronomical Society, AAS Meeting #231
    • 国際学会
  • [学会発表] Optical and near-infrared study of the Ca-rich transient iPTF15eqv in the early phase2018

    • 著者名/発表者名
      Kawahara, Naoki; Yamanaka, Masayuki; Kawabata, Koji; Nakaoka, Tatsuya; Kawabata, Miho; Maeda, Keiichi; Takaki, Katsutoshi; Akitaya, Hiroshi; Itoh, Ryosuke; Moritani, Yuki; Uemura, Makoto; Yoshida, Michitoshi
    • 学会等名
      American Astronomical Society, AAS Meeting #231
    • 国際学会
  • [備考] 重力波天体が放つ光を初観測 -日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場-

    • URL

      https://www.hiroshima-u.ac.jp/hasc/news/42167

  • [備考] 直径100mの気球で天体からの硬X線の偏光情報を世界初検出

    • URL

      https://www.hiroshima-u.ac.jp/hasc/news/41171

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公開日: 2018-12-17  

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