研究課題
本研究課題においては、Ia型超新星の親星に制限を与えることを目的とした観測研究を実施してきている。最近、我々のグループにおいてはIa型超新星の近赤外線観測によって、親星時代に放出されたと考えられる星周ダストの兆候を捉えることに成功した(Yamanaka et al. 2016)。これを受けて、爆発後の近赤外線観測がIa型超新星の親星に制限を与えることのできるプローブとなると考えている。私は、広島大学所有の口径1.5メートルかなた望遠鏡及び可視近赤外線観測装置HONIRを用いて、近傍銀河に出現する増光期のIa型超新星を系統的な可視近赤外線観測を実施してきている。本年度においては、昨年度取得した3天体の可視近赤外線データに加えて、さらに5天体のIa型超新星の可視近赤外線観測に成功した。また、得られたデータの解析を行った。これによって、極大光度後60日程度に亘る近赤外線ライトカーブを得ることができた。また、かなた望遠鏡においては可視観測装置HOWPolを用いて、これら5天体の分光観測も実施した。分光データは解析を済ませた。これらの分光データに見られる吸収線の青方偏移量を調べた。また、全体のラインプロファイルからも各々のIa型超新星のサブクラスを推定した。60日以上に亘る近赤外線ライトカーブは依然希少であり、その素性は明らかとなっていない。次年度星周ダストモデルで予言される理論ライトカーブとの比較を行うことで、星周ダストの性質に迫ることができると期待される。星周ダストの質量・ダスト組成・粒子サイズ分布に制限を与える。これらから親星システムを明らかにすることができると期待される。
2: おおむね順調に進展している
昨年度取得したデータに加えて、さらに5天体ものIa型超新星の可視近赤外線観測を実施することができた。これは、広島大学宇宙科学センターにおいて安定運用が難しいとされている近赤外線観測装置の保守管理が徹底されていたためである。また、即時解析パイプラインも構築し、得られたデータを速やかに解析することができた。
得られた8天体もの60日を超える近赤外線ライトカーブを用いて、系統的な星周ダストの性質を明らかにする研究を実施する。具体的には、星周ダストモデルから予測される近赤外線ライトカーブと観測結果の比較を行う。星周ダスト構造は、幾何構造、質量、ダスト組成、ダスト粒子サイズ分布を仮定して構築されており、比較検討からこれらの物理パラメータに制限を与えることができると期待される。特に質量からは親星時代の星周物質の放出率を与えることができ、元の親星システムに強い制限を与えることができると期待される。
残額は微小であり、本年度予算と合わせて研究報告のために学会参加の旅費に充てることにする。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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