研究課題/領域番号 |
17K14255
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
新納 悠 国立天文台, ハワイ観測所, 特任研究員 (50632163)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ガンマ線バースト / 突発天体 |
研究実績の概要 |
母銀河内部の金属量非一様性の効果を取り入れた継続時間の長いガンマ線バースト(long GRB、以下では単にGRBと表す)の母銀河モデルを作成し、低赤方偏移(z < 0.4)のGRB母銀河について観測データから導き出される金属量分布との比較からGRB発生と金属量の関係を定量的に制限する研究の成果をまとめ論文として出版した。GRBの発生メカニズムには現場の金属量が深く関わると考えられており、母銀河の金属量分布の全体像を把握したことは、GRBの起源星の性質を明らかにしていくための重要な足がかりとなる。 観測データのさらなる収集は天候不順により振るわなかったが、幅広い赤方偏移に分布するGRB種族合成モデルの土台となるGRB残光光度進化モデルを開発することができた。このモデルは残光放射を説明する標準理論に基づいて残光の光度曲線とスペクトルを関連付けて、星間減光等の影響を受ける前のGRB残光本来のスペクトルを推定することを可能にするものである。これによって観測データの少ない波長帯でのGRB残光高度分布とその時間変化の推定や、残光視線上の減光量の測定が可能になる。 また、近年発見された新種の突発天体である高速電波バースト(FRB)がGRBと同じく大質量星に関連した爆発現象であることをしめす状況証拠をFRBのカタログデータから発見した。FRBの正体は現時点では全くの謎であるが、GRBと同じく新しい高密度星の形成に関連するされるとされる説もあり、今回の発見は状況証拠ながらこれを支持するものである。これによって、今後あらたな観測手段からGRB研究を発展させる足がかりが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来予定していた研究進捗に加え、GRBとは全く別種の観測によって発見された突発天体であるFRBとGRBの起源に関連性があることを示す観測的証拠を発見できたことは当初の予定にない重要な発展である。観測データの取得に関しては天候不順の影響を受けて望ましい進展が得られていないが、他の研究グループの取得したデータを収集することで研究計画全体への影響を小さくとどめることが可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きGRB母銀河の観測データを収集する。また、GRBとの関連が示唆されている突発天体のFRBについても発生場所を特定する観測を進めてGRBの発生現場の性質と比較することで両天体の発生起源解明の手がかりとする。 また、これまでに開発した残光光度進化モデルをGRB残光観測の多波長データに適用して、星間減光進化研究への応用を図る。
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