本研究は継続時間の長いガンマ線バースト(long GRB、以下では単にGRBと表す)の起源天体の性質を母銀河観測と銀河モデルの比較によって明らかにし、さらにGRB残光の様々な波長での光度分布とその時間変化を解明することで、GRBを高赤方偏移宇宙探査のプローブとして信頼性の高いものにするものである。 この目的を達成するため、前年度までの研究では、母銀河内部の金属量非一様性の効果を取り入れたGRBの母銀河モデルを作成して低赤方偏移のGRB母銀河について観測データから導き出される金属量分布との比較からGRB発生と金属量の関係を定量的に制限したほか、幅広い赤方偏移に分布するGRB種族の観測的性質を予言するために必要となるGRB残光光度進化モデルの開発を進めてきた。また、近年発見された新種の突発天体である高速電波バーストがGRBと同じく大質量星に関連した爆発現象であることをしめす状況証拠を発見し、さらに、GRB や高速電波バーストなどの突発天体の可視光追観測を効率的に行うための観測システムを開発して東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に導入した。 今年度はこれまでに開発したGRB残光モデルを用いて、高赤方偏移GRBの観測を目的とした将来の衛星計画にむけた残光の性質の予想を行い、実際の観測でGRBの性質や遠方宇宙の環境をどこまで制限することが可能か検討した。また、これと平行してGRBと高速電波バーストの統計的性質の比較研究も実施することができた。
|