研究課題/領域番号 |
17K14259
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
江草 芙実 国立天文台, チリ観測所, 特任助教 (30644843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 渦巻銀河 |
研究実績の概要 |
近傍宇宙では銀河の半数以上に渦巻腕構造が認められているが、その生成・維持機構については未だ統一的な見解が得られていない。そこで我々研究代表者らは、星の腕とガスの腕のずれに初めて着目し、その半径依存性から腕構造の起源と寿命を判定する手法を提唱した。本研究では、この手法を約20の近傍渦巻銀河に適用し、それぞれの銀河での腕構造の寿命とその起源を理解すること、また全ての銀河での結果から腕構造の寿命と深く関わる要因を明らかにすることを目的とする。 1年目である2017年度は、星とガスの質量分布を得るために必要なデータの収集を行った。星質量分布作成に必要な可視光・近赤外データはSINGSサーベイより、ガス質量分布作成に必要な電波データはCANONサーベイ、THINGSサーベイなどより入手した。 ガスの質量は電波データより容易に導出できるが、星質量はSEDフィットという手法を可視・近赤外など多波長のデータに適用して求める必要がある。そこでまず、必要なデータが得られた銀河の中から、これまで多くの研究が行われてきた銀河を1つ選び、星質量を求めることとした。また、SEDフィットには、CIGALEというコードを用いることとした。可視・近赤外の多波長データはそれぞれ視野や分解能など異なる特性を持っているが、SEDフィットのためには全てのデータを均一に揃える必要がある。この特性の理解と均一フォーマットへの変換に時間を要しており、星質量分布の導出には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述の通り、SEDフィットを行うための、画像の特性の理解と均一フォーマットへの変換に時間を要しているため、予定していた星質量分布の作成は終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
可視・近赤外のデータ特性の理解(特に、PSFの形状の補正や、観測装置による人工的なパターンの除去など)を促進するため、これらの波長での観測やデータ解析に詳しい研究協力者とより密に連携して研究を進める。 また、SEDフィットの結果の妥当性についても、研究協力者とともに精査する。具体的には、本研究で使用する星質量だけでなく、SEDフィットによって得られる他の物理量(星形成率や金属量など)が文献値と矛盾しないかといった観点から、妥当性の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度には計算機を1台購入予定だったが、共同研究者より古い計算機を1台譲り受けたため、新規購入は次年度以降に行うこととした。また、本研究での成果がまだ出ておらず、旅費を伴う研究会への参加回数も想定より少なくなった。 2018年度は、計算機の新規購入を再度検討する。また、研究会への参加に加え、共同研究者との打ち合わせなどに旅費を支出する予定である。
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