研究課題/領域番号 |
17K14259
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江草 芙実 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30644843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 渦巻銀河 |
研究実績の概要 |
近傍宇宙では銀河の半数以上に渦巻腕構造が認められているが、その生成・維持機構については未だ統一的な見解が得られていない。そこで我々研究代表者らは、星の腕とガスの腕のずれに初めて着目し、その半径依存性から腕構造の起源と寿命を判定する手法を提唱した。本研究では、この手法を約20の近傍渦巻銀河に適用し、それぞれの銀河での腕構造の寿命とその起源を理解すること、また全ての銀河での結果から腕構造の寿命と深く関わる要因を明らかにすることを目的とする。 1年目と2年目は、ある近傍渦巻銀河に対してSEDフィットを用いた星質量の導出を行っていたが、その銀河のガスのデータに問題があることが3年目にわかった。そこで4年目である2020年度は、対象の銀河を変更することとした。非常に質の高いガスのデータが既に存在し、かつSEDフィットに利用できる多波長データも存在する銀河を選定した。これまでの研究で手法がほぼ確立できていたため、SEDフィットによる星質量分布の導出はスムーズに行えた。また、使うデータの波長範囲や解析する分解能を変えてその結果を比較するという新たな解析も実施できた。現在はこれらの結果の評価と、使用したモデルやパラメータの妥当性の検証を行っている。 本研究課題は当初4年計画であったが、前述のデータの問題や2020年からのCOVID-19の影響で研究に遅延が生じたため、期間の延長を申請し5年目である2021年度も研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記載した通り、2020年度に解析対象の銀河を変更したため、当初の計画と比べると進捗は遅れている。ただし、これまでの研究でSEDフィットの実行やそのための準備解析については手法が確立できていたため、新たな銀河でのSEDフィットはスムーズに実施できた。また、使うデータの波長範囲や解析する分解能を変えた場合の結果の比較も行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はまず、2020年度中に行ったSEDフィットの結果を検証し、新たに解析対象とした銀河の星質量分布を決定する。その後、既に得られているガスの分布を用い、星とガスの腕の位置のずれを半径ごとに測定する。この測定結果を理論モデルと比較することで、この銀河の渦巻腕構造の起源について議論する。 また、この研究の過程で渦巻腕の位置を定義する手法についても考察しており、確立できれば他の銀河にも適用できる有意義な成果となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19の影響により全ての出張が取りやめになった。在宅での研究においても、追加の設備や機器が必要にはならなかったので、支出金額が0となった。 ただし、現在使用している計算機が不具合を起こす頻度が増加しているため、2021年度は計算機の購入を予定している。また、本研究の成果を論文として投稿し、その出版費用を支出する予定である。
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