研究課題
近傍宇宙では銀河の半数以上に渦巻腕構造が認められているが、その生成・維持機構については未だ統一的な見解が得られていない。そこで我々研究代表者らは、星の腕とガスの腕のずれに初めて着目し、その半径依存性から腕構造の起源と寿命を判定する手法を提唱した。本研究では、この手法を約20の近傍渦巻銀河に適用し、それぞれの銀河での腕構造の寿命とその起源を理解すること、また全ての銀河での結果から腕構造の寿命と深く関わる要因を明らかにすることを目的とする。1年目と2年目は、ある近傍渦巻銀河に対してSEDフィットを用いた星質量の導出を行っていたが、その銀河のガスのデータに問題があることが3年目にわかった。そこで4年目には解析対象の銀河を変更し、これまでの研究で確立したSEDフィットの手法とアーカイブデータを用いて、星質量分布を導出した。5年目は、得られた星質量分布の誤差・不定性を評価した。また、複数ある腕の位置を決定する手法のうち、どの手法が対象銀河において最適かの調査を開始した。6年目には、銀河の内側から外側の全面における腕の位置を単一の手法で決定するのは難しいことがわかったが、その一方で関連研究として進めていた分子ガスの輝線強度比解析の結果をまとめて論文として出版した。最終年度である2023年度は、対象銀河の円盤を内側と外側に分割し、内側での腕領域を定義した。外側ではこの銀河の性質から腕領域を定義することが困難と判断した。このように定義した領域ごとに解析をした結果、分子ガス量や分子ガス輝線強度比の分布が領域によって異なることを確認した。一方、領域の違いだけでは説明できない点もあったため、星形成フィードバックによる影響についても調査した。その結果、大局的な銀河構造と局所的な星形成活動の両者が分子ガスの物理状態に影響を与えていることがわかった。
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