研究課題/領域番号 |
17K14261
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
山岸 光義 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (30735676)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 赤外線天文学 / 星間物質 |
研究実績の概要 |
本研究では、星形成領域内でのPAH(多環芳香族炭化水素)の物理状態の空間変化と、その周囲の星間環境を明らかにし、PAH進化をコントロールする要因を解明することを目的としている。メインとなるPAH観測データの解析として、中間赤外線帯におけるPAHのスペクトルマッピング観測(波長5-15μm)のデータ収集を行なった。Spitzer望遠鏡のデータアーカイブをくまなくチェックしたところ、26箇所の星形成領域のデータが本PAH研究用に使用可能ということがわかった。これは研究計画時に想定していた数(15領域程度)より多い。これらの領域に対する本格的なデータ解析は、2年目に予定している。 また、上記で選んだ星形成領域に対する、他波長データセットの構築を行なった。まず、近赤外線帯に存在するBrγ、Paβ輝線をねらったナローバンドフィルターの開発と、それを用いた試験観測を行なった。これらの輝線はHII領域から放射されるものであり、PAHの励起源となるUV環境をトレースすることが出来る。共同研究者、メーカーとの打ち合わせを重ね、ナローバンドフィルターを製作した。実験室で透過率の確認測定を行なった後、南アフリカIRSF望遠鏡に持ち込み、試験観測を行なった。このフィルターを制作したことにより、既存のフィルターと組み合わせ、星形成領域におけるUV環境を定量的に議論できるようになった。加えて、星形成領域に付随する、分子雲のジオメトリーを明らかにするため、CO観測データ(特に野辺山45m銀河面サーベイ、ALMA)の収集も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2枚のナローバンドフィルターのうち、Paβ用フィルターは予定通り製作と試験観測まで終了したが、Brγ用フィルターはまだ試験観測が行えていない。このため、予定していたフォローアップ観測がやや遅れている。これには、メーカーでの製作に想定以上に時間がかかったこと、南アフリカへの渡航の機会が限られること、観測装置のトラブルが重なったことが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
PAHデータ解析においては、1年目に選んだターゲットに対する本格的な解析をスタートし、PAH物理状態のマップを導出する。また、Paβ、Brγ輝線のフォローアップ観測をスタートし、他波長データの収集を加速させる。最終的に、PAH進化の要因を議論する際には、PAHのマップだけでなく他波長のデータがあることが非常に重要となる。そのため、1年目でのフィルター製作と試験観測の遅れを考慮し、ターゲットの大きさを条件として、議論する天体を26天体から減らすことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定よりも、フィルター製作費用が安く抑えられたため。次年度以降の南アフリカ渡航費用、研究成果発表費用として使用する。
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