研究課題/領域番号 |
17K14263
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川村 広和 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50586047)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオンファンネル / イオンビーム輸送 / SIMION / フランシウム |
研究実績の概要 |
本申請課題は,電子電気双極子能率の精密測定を究極的な目的とし,磁気光学トラップ可能なフランシウム原子の個数を増強すべく,イオンファンネルの開発を目指すものである. フランシウムは,電子の電気双極子能率を特徴的な形で反映する系である.これを精密に測定するためには原子が十分な個数あることが重要だが,フランシウムは放射性元素なので問題となりやすい.そこで,限られたフランシウムを効率的に活用するため,高輝度中性原子線生成法を開発する.この手法は,イオンビームの収束と,専用オーブンによるイオンの中性原子への変換から構成されるが,本申請課題では,イオンファンネルによってビームを十分に収束できるようになることを目指す. 今年度は,イオンファンネル本体の設計シミュレーションを進めた.イオンファンネルは,対象イオンが高周波電場と充填ガス分子と相互作用することを利用するものであり,事前のシミュレーションが極めて重要となる.シミュレーションにおいては,イオン光学設計における代表的なソフトウェアである SIMION と,さらにガスの効果も考慮するために SIMION 用機能拡張ソフト Virtual Device を用いた.その結果,イオンビームを収束するために最適な条件を見出しつつある. シミュレーションと平行し,現行のフランシウムビームラインの開発も行った.ビームをファンネルで収束するにあたり,もともとのビームもできるだけ細い方が効率的に収束できる.そこで,ビームラインに新たに収束レンズを増設し,輸送効率を下げることなくビームプロファイルを小さくするための開発を行った.これによって,開発するイオンファンネルの効果をより高めることができるはずである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画は,イオンファンネルのシミュレーションを行い,設計を進めるというものであった.ファンネル本体の主要箇所のシミュレーションはおよそ完了している.これに加え,現行のビームラインの改良を行ったことで,当初計画よりもファンネルの効果を高められる見通しが立った. 以上より,進捗状況としては上記の区分を選択した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画通り,平成30年度には,引き続き,高周波イオンガイド部のシミュレーションを徹底的に行う.この年度内にシミュレーション及び設計を完了し,仕様を決定する.高周波イオンガイド自体は既存技術であるが,本申請課題においてはその応用の仕方が新しい.従って,高周波イオンガイドの開発経験を有する研究者たちと詳細な議論を交わし,本課題に相応しい形へと落とし込んでいく.それに基づき,ファンネル電極を製作し,各種必要部品とともに真空槽へ実装する.
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