研究課題/領域番号 |
17K14264
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 3次元半導体検出器 / 電子飛跡型コンプトンカメラ |
研究実績の概要 |
本研究では、暗黒物質の対消滅によって生成された陽電子と電子の対消滅による 511 keV のガンマ線をとらえるために、SOI-3次元半導体検出器を用いた電子飛跡型コンプトンカメラの開発を目的としている。電子飛跡をとらえることによって従来の古典的なコンプトンカメラに比べてバックグラウンドガンマ線の影響を抑えることができる。さらに、固体シリコン半導体を用いることで、既存のガス検出器に比べて感度の向上が期待でき、エネルギー分解能にも優れている。 平成 29 年度では、散乱部に用いるSOI-3次元半導体検出器(京都大学で開発されたXRPIX2b)の基礎特性の評価を行った。エネルギー分解能や、空乏化について、バイアス電圧値および温度依存性について測定した。マイナス60度の環境下において、アメリシウム241の線源を用いて測定試験を実施し、14 keV から 60 keV のエネルギー帯にあるピークを検出できていることを確認した。この時のエネルギー分解能は、14keV のエネルギーで約 0.75 keV であった。この時の素子ゲインは 6.8 μC/e- で寄生容量は 22.4 fF であった。 また、コンプトンカメラを開発するにあたって、1層目(散乱部)でコンプトン散乱、2層目(吸収部)で光電吸収した同時計数イベントを取得する必要があるため、散乱部と吸収部の読み出しボードを同期させるための改良を行った。1層目の散乱部でガンマ線が反応した際に1層目からトリガー信号を出力して2層目のボードへ送り、1層目でガンマ線が反応したタイミングと同時に2層目で反応したイベントを取得する。実際に線源を用いて測定試験を行いながら改良をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属の変更に伴う本研究のエフォートの変更があった。また、測定試験に用いる放射線源を使用するための規則の変更手続きおよび線源の購入や、測定に必要な恒温槽の購入など実験設備を揃えるのに時間がかかったことが、本研究がやや遅れている理由である。ただし、平成29年度でプロトタイプ製作に必要な物品は揃っているため、平成30年度では小型プロトタイプ検出器の開発および原理実証試験まで到達できる見込みがある。
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今後の研究の推進方策 |
平成 30 年度では、現在行っている散乱部と吸収部の読み出しボードの同期システムを完成させた後、原理実証用の小型コンプトンカメラの製作を行う。原理実証試験においては、同時計数イベントをなるべく多く得るために、テルル化カドミウム半導体ではなく、検出感度の高い結晶シンチレータを用いる。吸収部は最大で16チャンネルまで検出カウンターを取り付けることが可能であるため、コンプトンカメラとしての感度を向上させることが可能である。小型プロトタイプでは、散乱部である SOI-3次元半導体検出器でコンプトン散乱を起こし、2層目の結晶シンチレータで光電吸収を同時に起こしたイベントを計測し、そのタイミングにおいて散乱部で 511 keV のガンマ線由来の電子飛跡が見えるかどうかを確認する。実験と並行して、geant4 シミュレータを用いて、電子飛跡検出のためのシミュレーションを行い、実験結果と比較を行う。電子飛跡の検出が確認できた後、コンプトンカメラとしてガンマ線源を用いたイメージングの試験を行う。データ解析によって古典的なコンプトン散乱の原理で2次元画像を再構成した場合と電子飛跡を利用した場合で2次元画像のバックグラウンドの比較を行う。その後、シミュレータを用いて、SOI-3次元半導体と結晶シンチレータの組み合わせの場合にどの程度の角度分解能を達成できるかどうかをシミュレーションする。また、吸収部をテルル化カドミウム半導体検出器に置き換えた場合にどの程度の角度分解能を達成できるかについてもシミュレーションで予測を立てる。
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