研究課題/領域番号 |
17K14267
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内山 雄祐 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任助教 (90580241)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | データ収集システム / トリガー / ミュー粒子稀崩壊探索 / 大強度加速器実験 |
研究実績の概要 |
本研究はMEG II実験において安定した効率の良いDAQを達成することを第一の目標としている。初年度である当該年度は,MEG II実験のDAQおよび解析システムのハードウェア・ソフトウェアの準備・試験を実施した。 まず、解析およびストレージシステムをPSI研究所のスタッフと協力して構築し,その上にジョブ管理システムやデータベースなど基本となるプログラムを立ち上げた。自動でデータをチェック・バックアップ・解析する環境を整えた。9月から12月にかけてMEG II実験の試験ランが実施されたのに合わせて,オンラインシステムからの自動データ転送システムを開発・試験した。300MB/sの転送を安定に実現した。試験ランでは読出し回路の数の制限から本実験の1/8ほどのチャンネル数のみのデータ取得であったので,最終的なデータ量での転送試験は次年度となるが,達成した転送速度はMEG IIにおいて十分である。 オンラインでのデータ削減が重要となるが,データ削減手法に必要な実データの理解が進んだ。ノイズの理解とソフトウェアトリガー上での削減手法の確立に成功した。これにより,効率よいデータ選別が可能となる。また,高時間分解能の達成に重要なチャンネル間の同期手法(精度20 ps)を確立し,これもソフトウェアトリガー上オンラインで適用できることを示した。 解析ソフトウェアの開発は試験ランデータとシミュレーションをあわせて進めた。実データを用いた較正手法の開発がすすみ,データ取得後すぐに較正パラメータを導出し,オンライン上で反映させる準備が整った。再構成アルゴリズムはシミュレーションにより評価し,ハードウェアトリガーよりも高精度でイベント再構成するアルゴリズムが開発された。ただし,陽電子の再構成は効率と計算時間に関して,オンラインで実装するにはさらなる改善が必要となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画の主な目標であったDAQシステムや解析システムの開発・環境設定を予定通りおこない,試験ランを通した試験も順調に進めることができたため。 試験ラン時は研究代表者がPSI研究所に滞在し,現地のオンラインおよび計算機担当研究者らと直接議論・調査をすることで効率よく開発を進めることができた。 取得されたデータは想定よりノイズが大きく,このままではデータ削減とイベント選別に影響を与えることになるが,その後の詳細な調査によりソフトウェアトリガーシステム上でノイズを除去する手法を開発するなど対処がすすんだ。(回路の改善によりノイズを除去する研究も並行で進められており,次年度のデータ収集時には想定レベルになると期待されている。)
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成30年度はソフトウェアトリガーシステムの構築に向けて研究を進める。 DAQシステムをMEG II実験本番用のものにアップグレードし,その上にソフトウェア―トリガーシステムを実装する。読出し回路の開発が遅れており,年末になるまでは読出しチャンネル数が少ない状態(全体の1/5)で試験を進める。当該年度に開発したノイズ削減とデータ選別アルゴリズムを実際にオンラインで適用する試験をMEG IIエンジニアリングランに先立って実施する。30年度にはじめて運用されるドリフトチェンバーのデータの理解を進め,較正手法とデータ削減手法を開発する。読出し回路のチャンネル数がそろい次第,ガンマ線検出器の性能評価ランを実施し,そのデータを用いてソフトウェアトリガーシステムの性能・データ圧縮率を見積もる。ドリフトチェンバーを用いた陽電子トラッキングは引き続きシミュレーションを用いた開発を進め,現状課題となっている再構成効率の改善とパターン認識の高速化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者により開発されているデータ収集回路の開発が遅れたため,最終形に近い形でのDAQ試験ができなかった。そのため,新しい計算機システムでの試験は実施せず既存のシステムで対応した。 次年度で計画している最終システムの計算機資源購入に合算して用いる予定である。
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